Pachi's Blog Annex ~自薦&自選よりぬき~

『Pachi -the Collaboration Energizer-』の中から自分でも気に入っているエントリーを厳選してお届けします♪

エンタープライズソーシャルとビッグデータ

オリジナルはこちら(2017/2/22)

 

当記事は2013年5月にin the looopに寄稿したものですが、元記事が削除されましたので転載します。


 

 エンタープライズソーシャルとビッグデータの関係

 

ここ1,2年で急速に(少なくともビジネス界隈では)市民権を得た言葉があります。「ビッグデータ」という言葉です。

きっと、毎日のように皆さんも目に耳にしているんじゃないでしょうか?

 

ではみなさん、エンタープライズソーシャルとビッグデータ、この2つの言葉には強い結び付きがあるのはご存知ですか?

 

エンタープライズソーシャルが活性化すると…

 

エンタープライズソーシャルの土台となるのは、社員一人ひとりの自律的な活動です。

なお、ここで、読者の皆さんとの認識を合わせておきたいのですが、私Pachiがエンタープライズソーシャルと書くときに指し示すのは、企業内の個人が「業務を含めた」コミュニケーションやコラボレーションを実施するプラットフォームです。

 

まれに「当社では、業務の話をエンタープライズソーシャル上で行うことは禁止しています。エンタープライズソーシャルは福利厚生の延長線上にあり、仕事から距離を置いたコミュニケーションのためのものですから。」という話を聞くこともあります。

 

エンタープライズソーシャルをどう捉えてどう使うかはもちろん自由なわけですが、福利厚生のクラブ活動が業務とみなされないように、そこで業務を行わないのであれば、私にとってはそれはのエンタープライズソーシャルの定義からは外れるものです(なお、クラブ活動はコミュニケーションの機会としてとても貴重なものだと私は思っています)。

 

エンタープライズソーシャルがうまく活用されている、活性化しているという状態は、社員一人ひとりが積極的に情報の発信者や流通者となっていることを意味します。

 

このように場が活性化しているとき、そこでは以下の図にあるフロー情報もストック情報も増え続けているはずです。

(画像はコラボレーション・エンジニア 大川宗之さんに提供いただきました)

 

簡単に、エンタープライズソーシャルにおけるフロー情報とストック情報の関係を解説しておきます。

 

多くのイノベーションが新しいアイデアや考え方によって生みだされている。
そこには強い瞬発力と拡散力で情報をフローさせるタイムライン型のツールが必要とされる。

 

しかし、イノベーションの多くは、これまでの技術の組み合わせによって編み出されることが多いのもよく知られている。
そして、用いられている技術が自社のものであれば、そのイノベーションが自社を強くする可能性は格段と高くなる。

 

自社内にストックされている有益な情報がフローに乗りやすいよう、シームレスにストックとフローの仕組みがつながっている方が良い。

 

でも、ちょっと待って下さい。

情報とその流通量の増加は、すべてが「良いこと」でしょうか。

 

エンタープライズソーシャルに対する意識や活用目的が正しく認識されていなければ、情報の増加が「無駄な情報に対する余計な作業」の増加につながる可能性も否定できないのではないでしょうか…?

 

エンタープライズソーシャルが作業の増加を招く?

 

エンタープライズソーシャル上で交わされるコミュニケーションの増加が、そこでインプットされた情報への対応作業の増加と比例していては、社員にとっては単なる「処理作業の増加」にしかならないという事になります。

 

おそらく、仕事にまじめに取り組んでいる社員は、現在すでに100%に近い業務をこなしているはずです。

そんな彼らに、これ以上の処理作業を与えることは、中長期的に考えて企業にとって良いことではないでしょう。

 

増やすべきは処理作業というやらされ仕事ではなく、目的意識から生まれる自発的な取り組みであり、それに費やすための時間です。

 

そうでなければ、自分たちを苦しめる結果になるであろう情報を、誰が好き好んで発信/流通させるでしょうか?

 

 大丈夫! たくさんのムダが減ります

 

ところで、エンタープライズソーシャルにおいて、Facebookにおける「いいね!」的な仕組みが一番役に立つのは、次の1~3のどれだと思いますか?

  1. いいね!を貰おうと社員がいい話や面白い話を書くようになり、PV(ページビュー)やUU(ユニークユーザー)が増える

  2. いい話や面白いニュースが社内に拡がりやすくなり笑い顔が増える

  3. 趣味の話などが社内に増え、コミュニケーション量が増える

 

どれも良いことではありますが、それが一番ではありません。

 

エンタープライズソーシャルにおける「いいね!」の真骨頂は、自社にとって高価値の情報や資料を高頻度、広範囲にフローさせるところにあります。

 

簡単に、高価値情報が社内に頻繁かつ広範囲にフローする仕組みを解説します。

 

ある人がいいね!した情報や資料は、その人とつながっている他の社員のタイムラインに表示されます。

 

個人によりつながっている人の多さに違いはあるものの、「いいね!する人の多さ」と「情報がタイムラインに表示される頻度」は比例します。そして「情報が表示される頻度」と「情報が活用される頻度」も比例の関係にあります。

 

また、表示頻度と活用機会が増えることで、情報が社内の別のクラスターに「飛ぶ」チャンスも増えます。

クラスター間の接点になっている人が「いいね!」をすることで、有効活用される機会が増えるのです。

 

そしてこれが積み重なっていくと、価値の高い情報や資料が社内に拡がり、それ以外のものは収束していくようになっていきます。

 

これが意味するところは「減るものもたくさんある」ということです。

具体的にいくつか挙げてみましょう。

 

  • 情報を無駄に探しまわる時間
  • すでに存在している資料をゼロから作り始めてしまうような無駄な作業の時間
  • 誰が特定の情報に詳しいかを調べまわる時間

 

エンタープライズソーシャルが企業の戦略や方向性を決める

 

ここまで、エンタープライズソーシャルのデータ増加が社員個人、あるいはグループにもたらす影響を見てきました。また、ビッグデータの「量」の側面を捉えてきました。

 

ビッグデータという言葉にはまだはっきりと定義されていない部分もあり、また、正直その言葉を聞く人によりイメージするものに大きな違いがあるのが現状だと思います。

 

自分たちに都合よく解釈したものが多いことも否めず、「胡散臭さ」を感じる人がいるのも無理もないことだろうと私自身も思っています。

それでも、大雑把には、以下のような特性があるのがビッグデータではないでしょうか。

 

  1.  データ量の多さ
  2.  データの質が非構造型だったり、不定形のものも
  3.  データソースの多元性
  4.  データの組み合わせが新しい何かにつながりやすい

 

今後、ビッグデータ活用方法や分野はより一層洗練され、マーケティングや製品開発、セールスやサポートなど、ビジネスのさまざまな局面やあらゆる部門に大きな変化をもたらす可能性が高いでしょう。

 

そして、エンタープライズソーシャル上で発生するデータも、自社発のビッグデータの主要構成要素と捉えられ、社員の意識や行動ログがその他のさまざまな情報と共に分析や解析され、自社の重要戦略や方向性を左右することになる日もそう遠くはなさそうです。

 


 

今回は、エンタープライズソーシャルとビッグデータの関係を、今とこれからの視点を交えて書きました。

 

自社のソーシャルシフトが順調に進むかどうかが、社員一人ひとりの行動次第という未来 — 私はとってもワクワクしています。

 

Happy Collaboration!

 

本物のリーダーシップとマインドセット(『女性が管理職になったら読む本』読書メモ)

オリジナルはこちら(2016/11/25)

 

『「キャリア」と「自分らしさ」を両立させる方法』という書名の本と『女性が管理職になったら読む本』という書名の本と、あなたが気になるのはどっちですか?

それでは、気になるだけじゃなくて、実際に手に取って読んでみようと思うのはどちらですか?

 

数カ月前に手に取り、すごくおもしろくて長い「自分専用読書メモ」を取ったのが上記書名の本でした。

そう一冊の同じ本で、メインタイトルが『女性が管理職になったら読む本』で副題が『「キャリア」と「自分らしさ」を両立させる方法』です。

 

IBM社内有志の「新しい働きかた研究会」でもオススメの一冊として紹介しているのですが、私はこの本を、メインタイトルとはまったく異なり、女性向けではない(むしろ男性向けだと思う)し管理職かどうかにも関係していないと思っています。
読むべきは「自分らしくあることと組織で求められる行動に、矛盾ややりづらさを感じている人」じゃないかと感じています。

 

さらには「あらゆる場所・組織で、リーダーになっている人 / リーダーになろうという意思を持っている人」にも強くオススメしたいです。

なお、ここでいうリーダーは、役職とか肩書きは一切関係がありません。そして、私が思い描いているリーダーとリーダーシップについて、この本の後書きでとても分かりやすく、ぴったりの説明が書かれていました。

 

『リーダーとは、まわりの人たちを励まし、動機付けて、行動を起こすエネルギーを与えること』ができる人

「オーセンティック・リーダーシップ」とは『現状に甘んじることなく日々自分を訓練する、自分の価値観に基づく理想を追求する』リーダーシップ

 

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こんな風に、いろいろなところでこの本のことを話していたら、昨日、訳者の、というかこの本の実質的なプロデューサーの1人であり構成者である小崎さんとじっくりお話しさせていただく機会がありました!

現在の株式会社Warisでワークスタイルクリエイターとしての活動や、前職の日本総研時代に「なでしこ銘柄」の策定に関わられていた頃のお話など、本当に私が聞いてみたかった話をいろいろ伺うことができました。

(先日『「レジリエント・カンパニー」と人を動かす指標』に書いた指標の役割:「自分たちの進むべき方向や道のりを伝えてくれる力強さと包容力を持つ、未来へ向けた地図のようなもの」だと思うと書きましたが、それに対してすごく力強いエールをいただけました。)

 

私が思うこの本の最大のポイントは以下です。

  • 社会のマインドセット(思い込みや先入観)を理解して、活用しよう
  • 自分の特質や性格を深く理解して、それに応じて「行動」を変えよう
  • 「作動的」とも呼ばれる「ヒエラルキー型の思考」と、「共同的」と呼ばれる「コミュニティー型の思考」を理解して使い分けよう

 

それぞれ、複数の側面から「なぜそうすべきか」が紹介されているのですが、この本の特徴は、それらの説明を情緒的なものに頼るのではなく、心理学の実験や統計から読み解いている点です。

いくつか、重要なデータや考察について、小崎さんがセミナーで語っている内容が文字起こしされているので、こちらを見ていただくのが分かりやすいと思います。

 

女性が「管理職になりたくない」のはなぜ? “無意識バイアス”に支配される私たちの心 (logme | ログミー より)

 

いくつか本を読みながら、とても大きく頷いてしまったところを引用して紹介します:

 

 

リーダーである私の言うとおりに動きなさい」という交換型リーダーシップでは、リーダーの指示が適切でないと質の高いアウトプットが期待できない

 

風貌や生まれもった属性はコントロールできないが、第一印象に重要な影響を与えるマインドセットや行動はコントロールすることができる

 

ネットワークの活性化は、組織の側にとっても望ましいことです。特に、フラット化が進んでいる今日の組織では、上司と部下といった組織上のつながりとは別の非公式で横断的なネットワークが果たす役割の方が重要になってきています(…)「人と人がつながり、そこにシェアやシナジーが生まれるには『信頼』が必要だ」と考えました。ここでは信頼を「他人のある行動に対して無防備でいられること」と定義しています

 

 

最後に、もう一つ気になっていること、そして小崎さんと盛り上がった話のことを書きます。

「女性は自身を過小評価してしまう傾向がある」という話がいくつかの例と共に書かれています。そして、その原因が本人や周囲の「女性は女性らしく」というマインドセットや無意識のバイアスが強く関与しているためだと。

 

でも、実際には、本人や周囲の話だけではないですよね。。ありとあらゆるところで「xxxらしさ」を求める人がいたり、それこそまったく無意識のうちに、自分が「女の子には優しくしなくちゃダメよ」とか「男の子なんだから泣かないで我慢しなさい」とか、ちゃんと考えると「にはとかなんだからとかいる?」って言葉が日常には溢れていますよ。

「らしさ」を求めているのは、他の誰でもない自分自身。

 

…もちろん、そうした細かいことすべてを気にしていたらキリがないし疲れちゃうけど、でもときどき、自分自身や身の回りを「あれ?」って見直してみるのが良さそうな気がします。

本でも紹介されている、感動的な動画を貼り付けてお終いにします。

 

 

Happy Collaboration!

「レジリエント・カンパニー」と人を動かす指標

オリジナルはこちら(2016/11/11)

 

指標(しひょう)とは、物事を判断したり評価したりするための目じるしとなるもの。

Wikipedia 指標 より)

 

先日『いい指標がもたらすもの』という記事を読み、そこに書かれていた”いい指標は人を動かす“という分析を読んで、「指標」というものの持つ意味と価値を自分の中で改めて認識しました。

私が「指標」と聞いて真っ先にイメージするのは、自分たちの進むべき方向や道のりを伝えてくれる力強さと包容力を持つ、未来へ向けた地図のようなものです(でも実は、私はまったく地図を読めない男なのですがww)。

 

今、私は仲間たちと新しい指標作りの活動を進めています。

これからまだ紆余曲折があると思うし、「ジャジャーン!」って発表したい気もあるので今の段階であまり細かくは説明しませんが、簡単に言えば「人を幸せにする組織を増やす」ための指標を作ろうとしています。

 

もちろん、どれだけ壮大なことをしようとしているかは分かっています。

でも、壮大だからこそ「作るのだ!」という意思が重要だし、意思の基に動いているからこそいろいろなことが起きやすくなるんじゃないかと思うのです。

 

活動のさなかにピーター・D・ピーダーセンさん(以降ピーターさん)という、ステキなソーシャル・デザイナーと知り合うことができました。

ピーターさんと話をしていたら、彼の考えが、私たちの取り組みととても近い部分を持っていたことに気づき、ピーターさんの著書︎ 『レジリエント・カンパニー ~なぜあの企業は時代を超えて勝ち残ったのか』を読んでみたところ…ビンゴ! ヒントに満ち溢れた一冊でした。

 

とても壮大な視点と緻密な考察、そして溢れるほどの情熱が注ぎ込まれた一冊で、私が簡単に伝えられるものではないのですが、まずは一番コアな概念の部分を少し引用します。

 


 

◼︎ レジリエント・カンパニーとは

危機に直面した時の回復力が高く、事業環境の変化に柔軟に対応し、そのストレスや不確実性の中から、次なる発展のきっかけを見出し、社会全体の健全な営みに資する行動をとる企業。

 

◼︎ レジリエント・カンパニーの「3つの特徴」と「7つの行動」

3つの特徴

  • アンカリング(Anchoring)ができている: 企業としての「拠り所」があり、社員と顧客(およびその他の利害関係者)を惹きつける魅力がある。さらに、信頼と信用を積み上げている。
  • 自己変革力(Adaptiveness)が高い: 事業環境の変化をいち早く察知し、機敏に行動に反映できるカルチャーと組織をつくっている。
  • 社会性(Alignment)を追求している: 社会の方向性(近未来市場における決定的な競争要因)と、自社の戦略と行動のベクトルが合っている。また、社会との好循環を生み出す行動に努めている。

 

7つの行動

  1.  価値観と使命を活かす(アンカリング)
  2.  信頼を積み上げる(アンカリング)
  3.  ダイナミックに学ぶ(自己変革力)
  4.  創造性と革新力を引き出す(自己変革力)
  5.  研究開発を一新する(自己変革力)
  6.  トレードオンにこだわる(社会性)
  7.  ブランドを作り直す(社会性)

 

本の中では最初にこの特徴と行動が示された上で、ではどう具体的に進めて行けば良いのか、そして先駆者として取り組んでいる企業が紹介されています。

そちらはぜひ、手に取って読んでみてください。

 

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もう一箇所、最後の方に描かれている重要なポイントが「レジリエント・カンパニーの4つの成功法則」です。

  1.  リーダーシップ+アイデアの活発な循環
  2. トランスフォーメーションへの覚悟
  3. DNAとカルチャーへの埋め込み
  4. 放射状に価値を生む

 

この4つを実現させるために大きな役割を担っているのが、企業内ソーシャルだと私は強く思っています。

『レジリエント・カンパニー』の中で、トップ・ダウン・アップ、あるいはボトム・アップ・ダウンという言葉で紹介されているのは、経営層の構想が会社の隅々にまで浸透し、ボトム・アップで現場から出てきた経験や課題が経営層にまでしっかりと届き、それらがそれぞれの考えや行動に結びついていく活発なアイデアや意識の流れの重要性です。
これを実現させるのは、『見て見ぬふりをするのではなく、むしろ、改善のためにスピーク・アウトすることが、自分の責任だと感じている』社員を増やしていくことに他ならないし、『自社のDNAやカルチャーにまで新しい行動を落とし込むための努力』を経営層が怠らないことです。
社員が、時間や場所の制約を超え、内面から湧き出る多様性を発揮できる場所として、社内ソーシャルはアイデアや意識を磨き循環させる、とても重要な仕組みだと思うのです。

 

最後に、昨日のピーターさんとのディスカッションの一部を紹介して終わろうと思います。

 

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■ 日本企業がトレード・オフしてきたもの

長命企業が多い日本だが、それは「自分を押し殺して耐え忍び守ってもらう」という社員のトレード・オフに基づいていたのではないか。

「長命の条件」が激しく変わっている現在、個人も組織もトレード・オン(何かを得る代わりに何かを諦める、捨てるではなく、両者を得る方法を見つける、あるいは見つけようという意思を持って行動すること)に踏み出す必要があるだろう。

レジリエント・カンパニーが衰退曲線を描く前に新規市場を開拓していくように、私たち個人も未来志向で、さまざまな制約を機会へと転換していこうという意思の力が重要だ。

 

Happy Collaboration!

『下り坂をそろそろと下る』を読みました - 嫌韓と新幹線と標準

オリジナルはこちら(2016/6/17)

 

この本、平田さんの「四国論」であり、「日本論」であり、「司馬遼太郎論」でもあるのです。

『琥珀色の戯言』 : [本]【読書感想】下り坂をそろそろと下る より

 

下り坂をそろそろと下る表紙

下り坂をそろそろと下る』というすばらしい本を読み終え、紹介ブログを書こうと思って皆がどんなことを書いているのかとググッてみたところ、最初に目に付いたのが上の一節でした。

一冊全体の要所要所がバランスよく捉えられていて、本の骨子はこのブログを読めば分かります。そして実際に、この読書感想を読んで本を購入したりAmazonのサイトに遷移している人も多いようです。

ただ、私個人としての「ここが一番おもしろい!」と感じたところは、『琥珀色の戯言』以外の読書感想ブログをざっと見ても、あまり取り上げられていないようでした。

それが『第五章 寂しさと向き合う–東アジア・ソウル、北京』です。

 

この良書が少しでも多くの人に興味を持ってもらえるように、私にとってのハイライトである第五章から数箇所ピックアップし、思ったことなどをコメントします。

 


 

ヘル朝鮮

いまの日韓のぎくしゃくとした関係は、下り坂を危なっかしく下りている日本と、これから下りなければならない下り坂の急勾配に足がすくんでいる韓国の、そ のどちらもが抱える同根の問題を、どちらも無いことのように振る舞って強がりながら、国を賭けてのチキンレースをしているようにしか見えない。

そしてその傍らには、青息吐息になりながらも、猛スピードで急坂を登っていく中国という巨人がいる。問題は一筋縄では解けないだろう

 

日韓ワールドカップ実行委員会の理事でもあった著者が、ベスト4になったヒディング率いる韓国への嫉妬が席巻したネット論調などを交え、さらにはここ30年の日韓関係の流れや「韓流ブームの反動」などを踏まえて書いた言葉です。

そして「ぎくしゃくとした関係」の背後には「人は誰でも自分に都合のいい情報を集めがち」というバーナム効果に下支えされた「確証バイアス」が横たわっていることと、ここ数年の嫌韓・嫌中ブームの不気味な広がりにインターネットが強く関与しているだろうと書かれています。

 

私はインターネットのポジティブサイドを信じている一人ですが、残念ながら、これは著者の言うとりで、今のネットが抱えているダークサイドの象徴的な現象だと感じています。

 

安全とは何か

 

新幹線は、絶対に事故が起きないことを前提にして制度設計がなされている(…)新幹線の運行実績は素晴らしいが、 しかし、事故はいつか起こるのだ。そして、もし事故が起こったとき、新幹線のそれは、相当に壮絶なものになるどうことは想像に難くない。欧米のライバル企 業は、高速鉄道の売り込みに当たって、当然、ここのところを突いてくるだろう。

「だって、原発は事故を引き起こしたじゃないですか」

 

世界最高峰の技術の結晶とも呼べる日本の新幹線が、なぜ「売れない」のか。なぜ海外への輸出が続々と決まらないのか。

一見分かりやすい論理的な回答だけではなく、文化的な要素からの分析がなされています。

 

一分の遅れに苦情が来る日本特有の「文化」の上に確立された、驚異的な(あるいはバカげた?)定時運行能力を、「時間通りのほうがいいに決まってい る」と疑わないのは一種の判断停止だとも書かれていて、その「文化」の下に押しつぶされている人々の忍耐や相互監視が私の頭には浮かびました。

そして最近、私は鉄道という公共交通機関が、ゆるやかに破綻に向かっているんじゃないかとぼんやり考えています。

 

文明の味気なさに耐える

 

1. 自国の文化を愛し、それを標準として他者にも強要してしまう人

2. 自国の文化を愛しつつも、それが他の文化にとっては標準とはならないことを知って、適切に振る舞える人

3. 自国の文化に違和感を感じ、それを強制されることに居心地の悪い思いをしている人。あるいは、自国の文化に自信を持てずに、他国の文化を無条件に崇拝してしまう人

4. 自国の文化に違和感を感じても、それを相対化し、どうにか折り合いをつけて生きていける人

 

2と4を増やすのが異文化理解であり、相互交流であると書かれています。

私たちはなぜ『自分たちの標準とするものが、世界の標準であるとは限らない』–この実に当たり前のことを頻繁に忘れてしまうのでしょうか。

 

それはおそらく、「自分たちの標準外」に触れる機会が圧倒的に不足しているからだと私は思います。

そしてその理由は、自らが標準外に触れる機会を避けているから。あるいはすぐ近くにあるにも関わらず、標準外を見ていないかのように、あるいはそこに存在していないかのように振る舞い続けているからではないでしょうか。

 

負けてからが強いフランス。オランダの狡猾さ。スイスの堅守。ベルギーの柔軟性。

これらは他国や他民族との戦争に勝ったり負けたりしながら身に付けていったものだろう、そして日本に戦争に負けた経験が少ないが故に…とも書かれています。

 

もちろん、今から戦争経験を積むなんて馬鹿げた話はするつもりはありませんが、日常生活のなかで「自分たちの標準外」と穏やかながらもきちんと「摩擦」を生じることが大切な気がします。

無視する、舌打ちする、眉を寄せる、それでお終いにするのではなく、なぜそう感じるのかを自問して、ときに相手にきちんと要求して、少なくとも自分自身の標準を拡げていくことが第一歩だという気がします。

 

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もし、一冊丸々読む時間がなければ、第五章の40ページだけでも読んでみることをおススメします。

 

第五章 寂しさと向き合う――東アジア・ソウル、北京

『新・冒険王』/日韓ワールドカップ嫌韓の始まり/インターネットという空間/確証バイアス/韓国の病/ヘル朝鮮/北京へ/文明と文化の違い/新幹線はなぜ売れないのか/文明の味気なさに耐える/安全とは何か/零戦のこと/最大の中堅国家/安倍政権とは何か/二つの誤謬

 

Happy Collaboration!

 

無意識のバイアス研修に参加しました - ダメパチ撲滅協力のお願い

オリジナルはこちら: 2016/5/12 Pachi – the Collaboration Energizer

 

昨日、IBM社内の「職場における無意識のバイアス(Unconscious Bias in the Workplace)」という集合研修に参加しました。なかなか多くの気づきがありました。

 

「無意識のバイアス」に関する情報や、企業が実施している研修を紹介するコンテンツはウェブ上にたくさんあるので(この記事の最後には、企業が実施している研修の紹介へのリンクを置いておきます)、基本的な情報を知りたい方はそちらを見てください。ここではそれはサラッと流します

このブログ・エントリーでは、私が、自分にとって特に大切だと思ったことと、研修の最後に「自分のアクションプラン」として発表したことについて書きます

 

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サラッと受講背景について書いておきます。

まず、私は個人的に、もともと進化心理学や行動分析学など、認知バイアスとの関係が深い分野に興味があります。

加えて、ここ数年さまざまな企業が「無意識のバイアス」の社内研修を実施しているという話を耳にするたびに、早く自分も受けてみたいなあと思っていました

 

そして、一方でなぜ企業側が「職場におけるバイアス」にこれほど注目しているかにも興味があります。

一番の理由は「人は不公平な扱いを受けていると感じている状態では、本来のパフォーマンスを発揮できない」からだと思いますが、そうすると当然そういう「不公平な扱い」につながる「人に対する判断」から、できるだけバイアスを取り除こうよ、ということになりますよね。

 

次に、世界規模での「能力のある人やチーム」の奪い合いの結果、「内的要素(生まれついての特徴や属性)」や「外的要素(人生の中で作り上げてきた特徴や属性)」、「組織的要素(業務や職種などに関係する属性)」の点でそうとう多様性に富んだ状態となった中で、いかにスムーズに互いに快適な状態で働くことができるかを追求するためというのが理由ではないでしょうか

まあ、それ以外にもたくさん理由はあるでしょうし、もちろん重要度だって企業によりけりでしょうけどね

 

さて、それでは4時間の研修で、分かりやすい「バイアスの取り除き方」を身につけられたかと言えば……想像に難くないと思うのですが、やっぱり全然無理でした。

というよりも、そもそもバイアスって取り除くことができるのものなのか? 取り除く必要があるのかな? なんてことも考えざるを得ませんでした。

 

ペアやグループでのディスカッションでも、何度となく「そもそもバイアスの定義ってさ…」と言ったやり取りがありました

「偏見」、「先入観」、「決めつけ」…。正直、どれも分脈によってはぴったりとはまらなかったり、「自己経験をベースにした認知や判断と、どこで線引きするのか?」などと混乱することもありました

 

結局、日本語にするから難しくなっちゃうんだなって思っています。英英辞書を引いたら、いくつかぴったりだと思える定義に出会えました:

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要するに、「人に対する不公平な扱い」につながるところが問題なわけですよね

経験から得た知識や統計的な傾向を否定するわけではなく、それはそれとして、総論ではなく個としてやり取りする際などに、その知識や意識に引きずられちゃダメだよって。そして引きずられないた引きずられないためには、自分の持っているバイアスを把握しておく(「無意識」から「意識化」へ)必要があるよってことですね。

 

受講した結果として、はっきりと言い切れることは、4時間にわたり「バイアス」についてしっかりと向き合う時間を持つことはとても貴重な経験だし意義深いことだったと言うことです

なんだか、こうして書くと「なにを当たり前のことをいまさら」と思われそう…。でもね、私の中では自分の「無意識の偏見」に関する理解が確実に深まりました。

 

研修の後半では、じっくりと自分の持っているバイアスを見つめて、書き出していきました。

どうやら、私は「公平バイアス(もちろん私は間違えることもある。ただし今回は正しいと思いがち)」のカテゴリーに入る「バイアスの盲点」と「確証バイアス」がとりわけ強いようです。

 

  • 「バイアスの盲点」 - 他人のバイアスは認識できるのに、自分自身の同じバイアスを認識できない
     
  • 「確証バイアス」 - 自分のバイアスを裏付けるような都合のよい情報ばかりを集め、それをベースに解釈する

 

うん、そうだよ…思い込み激しいタイプだしな…。

そして具体的に現れてしまう私の顕著なバイアスは「地位へのバイアス」の強さでした。


職場においても、社会においても、直接のやり取りのない地位の高い相手に対して「どうせろくでもないことをしたり、うまいことやったりしてその地位になったんだろ」と強い疑惑を持って見てしまうのです…。ときに意味もなく嫌悪感まで感じてしまうのです。

実は、自分のこのバイアスには数年前から気づいていて、相手を「個」として捉えるべきときには意識して抑えています。

ただ、それでも何かの弾みに出てきてしまうんですよね…。

 

そんなわけで、研修の最後に発表した「私のアクションプラン」は以下です。

皆さん、ぜひダメパチを見かけたときにはご協力をお願いします!

 

自分の「地位の高い個人」に対するバイアスをオープンにして、それが現れているときには遠慮なく忠告してもらうようにソーシャルに依頼す:

地位の高い個人に対して、蔑んだり疑いの眼差しを向けているパチを見かけたら、あるいは、地位の高い人を不当に低く評価したり厳しい言葉で表していたら、遠慮なく「バイアスに囚われているダメパチになっているよ」と忠告してもら

 

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最後に、企業が実施している研修が紹介されている、あるいはいは研修そのもののコンテンツと、今回の研修とのつながりが深いと思っている自分の過去エントリーをリンクしておきます

 

研修関連

 

 

過去エントリー

     



Happy Collaboraton!

 

新入社員向け社内ソーシャル研修から

オリジナルはこちら(2016/5/9)

 

社内ソーシャルツールの普及に伴い、新入社員向けの社内ソーシャル研修を実施している、あるいは実施しようと考えている企業は増えてきているんじゃないでしょうか

ただ、インターネットで検索しても、まだまだオンラインには情報が少ないようです。

 

私は、6年前から日本アイ・ビー・エムで新入社員向けの社内ソーシャル研修を実施していますので、これから実施を考えている方、あるいは実施しているけどなんかピンと来ていないという方に、参考にできる部分やインスピレーションにつながる部分があるかも…ということで、先日実施した今年の研修でのポイントをシェアしたいと思います

 

参考: 2014年に書いたブログ記事新卒社員と一緒に企業内ソーシャルを考えてみ

 

ただ、先に書いておきますが、私自身も毎年毎回毎セッションごとに試行錯誤しますし、状況やニーズに合わせていろいろと手を入れながらやっています。

「これが正解」なんてものではまったくないですし、そもそも、研修や勉強会は会社ごとに内容が異なるのは当然でしょうから、使える要素やエッセンスがあれば活用してください。

(なお、書いている内容には多分に私の視点や捉え方が含まれています。「IBMの社内ソーシャルに対する理念」を私なりに新入社員に分かりやすく伝えようとしたものであって、IBMの公式見解ではありません。)

 

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(オリジナルは英語で、The Strategic Benefits of Modern Workforce Collaboration』というページに記載)

 

集合研修は1時間です(短すぎる? 理由は後ほど)。

前半は「なぜIBMは社内ソーシャルに熱いのか」、後半を「生産性をあげるアドオン的テクニック」を伝える形としています。

 

上の図は、前半内の前半からの1枚で、コラボレーションが職場にもたらす価値を、質や量、機能/非機能などの観点からマッピングしていま

この図と共に私が伝えているのは、なぜこのオンライン・コラボレーションツールが社員に提供されているのか、企業側(ここではIBM)の視点も理解しておこうということです。

 

誤解されたくないので為念で書いておきますが、「新入社員よ、会社の期待に応えるのだ!」なんてことは言いませんよ。そうではなく「近視眼的になり過ぎず、自分たちへの期待を俯瞰的に捉えて欲しい」ということ、「会社の期待の背景を考え理解する思考を身につけるといいよ」ってことを伝えています。

「ツールがあるから使いなさい」じゃ義務教育ですよね。

 

そして集合研修が「1時間」の理由ですが、答えはシンプル。

新卒社員の彼らは「ソーシャル・ネイティブ」なんて呼ばれ方もする世代です。そんな彼らにしてみればVerseConnections Cloud(IBMのオンライン・コラボレーションツールです)などの基本的な使い方は難しいものではありません。

わざわざ集合研修でそんなベーシックなことをやったら「え? これ、なにも集まってやることじゃなくね?」って言われるでしょう(いや、表立っては言われくても裏ではきっと)。

 

そんなわけで、「基本機能を学ぶハウツー系」は、30分ほどのベーシック動画と多数のショート・ムービー型教材を提供し、オンラインでセルフ・ラーニングしてもらうようにしています。

こうすることで、各自が必要性を感じたときや、数人のグループで一緒に教えあうような「モチベーションの高い状況」で学べるようにしているわけです。

 

ただ、こうした「自習」だけだとやっぱり抜け落ちる部分が出てくるわけです。

ベーシックな機能や使い方の奥には、そもそもその機能があるのはなぜか、そのツールが提供されているのはどういう理由なのか。そうした根底の部分や存在意義については、別々の場所で個々に学ぶよりも、同じタイミングで話を聞き、その後に仲間と一緒に考えたほうが、より理解が深まるし、自分なりの考え方を磨けると思うのです

 

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こちらは研修の前半の後半部分で使用しているチャートです。

以前に、ソーシャル・ビジネス憲章 (アルファ版)』というブログ記事でも紹介したことがあります。

 

・ ソーシャル・ビジネスの実践とは、評判を築き影響力を高めていくことである

多様な仲間とのコラボレーションや彼らの参加やフィードバックがより大きな意義を持つよう、自身や関与するプロジェクトの評判や影響力を高め、そこからポジティブな結果を導き出すことであ

 

・ ソーシャル・ビジネスの実践とは、自身の仕事内容をオープンにすることである

自身の仕事を周囲から見えるようにして、有用な情報へアクセスできるようにし、率直なフィードバックを求め、それを活かしてより良いアウトプットを生みだしそれをオープンに共有することである
 

新入社員に特に伝えたかったのは、「価値の高い働きかた」を目指して欲しいということでした。そして自分をブランド化して欲しいということでした

ナレッジや情報は、たくさんの人に何度も活用されることで、価値やそのインパクトが高くなっていきます

そういうナレッジを、たくさんの仲間に活用しやすい形で提供することは、価値を届けることに他なりません。

 

もう一つ。昔から「やるべきことをきちんとやっていれば、見ている人はちゃんと見ている」とはよく耳にする言葉ですが、はたしてそれって本当でしょうか?

見えるのは、「これまでにやった範囲のこと」であり、これからチャレンジしたいことや目標に向けて取り組んでいることは、目に見えないままの状態のことが多いものです。

 

実績を積み実力を上げてもそれが評判とならなければ、社内の広い範囲にはなかなか届きません。

とりわけIBMいう会社の規模では、どこの誰がどんなスキル、知識、パッションを持っているのかを把握するのは難しいのが実情です。

 

どんなにすばらしい製品でも、誰にも知られなければ売れることがないように、どんなにすばらしいスキルやアイデアも、周りに知ってもらい活用してもらわなければ「売れ」ません。

だからこそ、自ら「これまでにやってきたこと、今できること、今後やりたいこと、そのために今取り組んでいること」を発信していくことが大切です。地道に取り組むだけではなく、それにプラスして自己をブランド化していくことが重要ではないでしょうか。

 

 

すっかり長くなりました。

研修の後半部分の「生産性をあげるアドオン的テクニック」は、細かい話となりますし、IBM使用しているConnections Cloudというツールに関連する部分も多く、汎用性が低いところもあるので今回は割愛します

もし、「そこが知りたい」という方がいたら私Pachiまでコンタクトください。

 

Happy Collaboration!

 

ダイバーシティーが育たない本質はそういうことなんじゃないかな

オリジナルはこちら(2016/5/2)

 

ダイバーティーに関するとてもすてきなブログを読みました

ダイバーシティの本質はそういうことじゃないんじゃないか

 

ネット上でも話題になっていたので、ダイバーシティーや職場環境などのテーマに興味を持っている人の中には、読んだ人も多いんじゃないでしょうか

縁あって、どうやらこんど筆者の牛尾さんとお話しできる機会がありそうです。やった!

でもその前に、まずは自分の感想や問題意識を書き出しておこうと思います。

 

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■ 「日本人の美徳」 - 材料はなんでもOK。圧力鍋で簡単クッキン!

 

「これぐらいはやって当然だろう」という暗黙の話などもありません。おもんばかるに近いのですが日本人の「相手を優先し思いや る」という感覚はある意味美しいのですが、仕事においては鏡の法則が発動され、「これぐらいやってくれて当然」という空気を作ってしまうこともよくありま す。そういう変な「深読み」は必要ありませんのでシンプルで

 (ダイバーシティの本質はそういうことじゃないんじゃないか』より

 

勤勉性だとか時間に几帳面なところ、それから「おもてなし」や「阿吽の呼吸」などは、一般に日本人の美徳として、日本の善を表すものとして広く知られています。

でも、これらの善や美が現在の形に育ってきた背景には、日本社会の長年の「均一性信仰」と、同調圧力の高さがあるんじゃないでしょうか。

 

  • 大きく異なる文化や相容れない習慣に直面する機会が少ないため、人々の考え方や行動様式がどんどんと似通っていく。
     
  • たまに異質な行動や意見が出てきても「周囲と同調して、目上の人に言われた通りに従えるのが美徳」と子どもの頃から周囲の大人や教師に教え込まれる。
     
  • 個性よりも均一性が重視される中で、「お約束」の思考・行動パターンが良しとされ、さらに均一性と同調圧力が高まっていく……

 

なんだか、あらゆる素材を一からげに高温圧力釜に放り込んで、柔らかくなったらしょう油振りかけてハイ出来上がり! なんて感じの絵が頭に浮かびます。

 

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本当に、日本人が美徳としている「勤勉性」や「おもてなし」は、それほどすばらしいものなんでしょうか

多くの人が誇り、大切にしている日本的「善」って、ひょっとしたら均一性や単調さをデフォルメして具現化しただけのものに成り下がっていたり…しませんかね?

 

勤勉性の裏の「相互呪縛」や、おもてなしに潜む「過剰期待」が、勤続疲労でメリットよりもデメリットをもたらしていないかを構造チェックするときなのかも

 

 

■ あかあおきいろ、まるしかくさんかく - 自分の「無意識」を疑う

 

「すべての事が多様で違いがある事が当然」と考えることが重要だと思います。すべての人が、世界のコミュニティの「一部」にすぎず、マジョリティなどいません。

 それは国籍の違い、人種、性別の違いだけではありません。人間は、すべての要素が違っていて当然という前提で考える事がダイバーシティのポイントじゃないでしょうか

 (ダイバーシティの本質はそういうことじゃないんじゃないか』より



先月、こんなブログ記事を書きました。

多様性あれこれ(イノベーションと礼拝とフォルトライン理論)

 

この記事では「ダバーティーてめんどくさいし最初は非効率です。そこをちゃんと意識し覚悟した上でチャレンジしましょうよ」と書いています

中途半端な意識でスタートして「大変なばっかりで、ダイバーティーなんて本当に意味があるのか!」と誤解したまま途中で投げ出されてしまうくらいなら、手をつけずにいられた方がマシなんじゃないかという気がしたからです

 

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でも、やっぱり本当は、牛尾さんが書かれているようにダイバーシティーってすごく楽しいし、多くの人に生きやすさを与えてくれるものだと思っています。

 

単 一の集団と思い込んでいる人々も、本来は、伝わったと思っても、本当は伝わっていないのではないでしょうか?それは難しいことなのではないでしょうか? だから、ダイバーシティの環境でそれが崩れることで、本来の「効率的なコミュニケーション」について必死で考えて実践するから、生産性が向上するのではな いでしょうか?

 (ダイバーシティの本質はそういうことじゃないんじゃないか』より

 

あかあおきいろ、まるさんかくしかく。

パッと見て分かる違いを「いろいろあってすばらしい」と捉えるだけじゃなくて、一見同じ色や形に見えても、その中のそれぞれの違いを見分け聞き分け感じ分けられて、その違いを楽しめるようになることが大切なんだと私も思います。

 

先入観に囚われたコミュニケーションから一歩踏み出してみませんか?

まず、「普通はこう考えるだろう。こう行動するだろう」という自分の「無意識の予測」に疑問を持つことからスタートしてみませんか?

 

自分の意思や考えを「みんなとは違いそうだから…」と発せず飲み込んでしまうことをよしとぜず、「こういう意見もあるよ」「こう考えることもできないだろうか?」と伝えていくことで、みんなが住みやすい社会に近づいていくんじゃないかなって思っています。

そしてなにより、自分がそんな社会に住みたいのです

 

Happy Collaboration!