Pachi's Blog Annex ~自薦&自選よりぬき~

『Pachi -the Collaboration Energizer-』の中から自分でも気に入っているエントリーを厳選してお届けします♪

状況と役割と関係性。あるいは偏見とイマーシブとインプロ。

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www.ibm.com

スマホによって、人は退屈さや居心地の悪さというものに対する耐性を(ますます)失った」という話は数年前からちょこちょこ耳にする話。それはおそらく真実だろう。自分のことを考えても、エレベーターを待っている間とか、スマホをいじっていることも少なくない。

ただ、おれの場合は、それを無意識にやっているわけではなくて。
ほとんどの場合「この隙にメールチェックをしておこう」とか「退屈だから時間を潰そう」とか思って、意識的にやっている。

またそれと同じように、意識して「なんかちょっと居心地悪いなこの状況…。意識をここから切り離してしまえ」ってスマホを使うことも少なくない。

電車の中、処方箋薬局の待合室、早く着いてしまったスタート前のセミナーやワークショップ会場…。状況によっては罪悪感みたいなものも感じながら。

みんなはそんなことないのかな?

 

職場に潜む「見えない偏見」をあぶりだす! 9月1日(日) REVERSE開催 | 株式会社ソフィア

 

先日『REVERSE -見えない自分を知ることからコミュニケーションを変える-』という研修に参加してきました。

簡単に説明すると、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を、イマーシブ(没入型)演劇やインプロ(即興劇)を通じて浮かび上がらせて、自身のコミュニケーションスタイルや状況に対するスタンスを理解しようというものです。

 

簡単な説明になっていない? あるいはワケが分からない?

もう少しだけ細かく(でも、おれ自身の感覚と言葉で)説明してみます。

  1.  アンコンシャス・バイアス – 自分でも意識できていない、十分な根拠のない思い込み
  2.  イマーシブ(没入型)演劇 – 舞台と客席が分離しておらず、その場にいる人がすべて演劇の一部となる(役割を持つ)タイプの参加型の劇
  3.  インプロ(即興劇) – 状況設定がはっきりしない中で、参加者が別の参加者の演技を受けてアドリブで続けていく劇

 

2時間ほどの研修は、まず2番の「職場を舞台としたイマーシブ演劇」があり、その後3番の短い「インプロを含むいくつかのグループワーク」があり、その途中と最後に1番の「アンコンシャス・バイアスに関する気づきの共有」の時間を持つという内容でした。

時間にすればわずか2時間だったものの、自分の心の動きはなかなかダイナミックに、そして同時進行的にいろんなことを感じていた気がします。

あのとき感じたことを今後も思い出せるように、時系列に書いておこうと思います。

 

 

10:15

会場について、差し出された箱の中からボールを一つ掴むと、10と書かれていました。そして座席票(上の写真)が渡されました。

どうやら最初がイマーシブ演劇らしい。でも、なぜかおれだけ他の参加者(番号)から離れていて周りに誰もいない…。やれやれ、なんか特別な席っぽいぞ。ちょっと面倒かも?

でもまあ、周りにあんまり気を使わなくていいからいっか。始まるまで15分くらいあるし、ちょっとスマホでもチェックするか…。

 

10:45

Out Of Theaterの役者さんたち、上手いなぁ。…そしてなんだかこの席、セリフ振られたり声かけられることが多いな……。あっ分かった! 参加者の中でおれだけ役職付きだ! 多分、一番下っ端の…課長代理?

…参ったな、課長代理なんておれには1番遠くて、どう立ち振る舞うキャラ設定にすればいいやら…。…いや待てよ。おれは役者じゃないんだから「演じる」心配は不要じゃね? もっとこの場を味わわないと。

…でも考えてみれば、「この場でおれにとってふさわしい行動ってなんだろう?」って、家にいるとき以外はいつも嗅ぎとろうとしているかも、おれって…。

 

11:00

ああ、もっと関与したい。部長に意見言いたい。課長にも意見言いたい。彼女にも。

あれ? でもおれが「関与したい」って思うのはなんでだっけ。「お芝居上手いですね」って後から褒められたいから? それは違うな。「全体を見れている人」「やるべきことをやれる人」って周りにアピールしたいから? あるいはそうしないでいる自分自身に感じる心地悪さを解消したいから?

…まあ何はともあれ、時間管理の観点からも「超積極的関与」は誰にも求められていないだろうから、味わっていようっと。

あれ、これでイマーシブ終わりか。あー、おもしろかったけどモヤモヤしたなぁ。

 

 

11:15

こっからインプロね。さて何やるのかな。

(アイスブレイク的共同ワークで)ここ多分、サラッと流すところっぽいんだけど、すでにややこしいことしようとしてる人いるな。おれの番で1度リセットできるかな?

……うーん、効果なかったみたい。残念。

 

11:30

体の姿勢が意識に与える影響の話だな。これは昔から結構認識していて、プレゼン前に自己暗示的にガッツポーズ使ったりはしてるんだよね。あ、でもあえて「縮こまった姿を取ることで、相手を喋りやすくする」っていう発想はこれまでなかったな。なるほど。

そしておれは「足を組んだり手を頭の後ろで組む」ポーズが「権力的なポーズ」で、「相手を威圧しようとするポーズ」だって知っているし、「まあ別にそう取られても構わないからいいや、楽だし」ってやってるつもりだったんだけど、もしかしたら、「手を顔に当てる」っていう「不安の表出化を感じさせるポーズ」が自分の癖だって知っているので、そこでバランスを取ろうとしているのかも? — これまで考えたこともなかったけど。

 

11:45

(いくつかお互いのキャラ設定を変更しながらのインプロ直後。)「役割りの力」って強いよなぁ。「あなたはxxxx」って自分の役割を設定されると、積極的にそれにハマりにいく自分がいる。そして「相手はxxxx」って設定でも、同じように相手に合わせた役割を作りハマりにいく自分がいる。

そう言えば、好きだった上司に昔言われたっけ。「あんたは自分のことを分かってないわね。あんたのいいところは、どんなに不安定な状況でも、どうにか着地させて生き延びる道を見つけられるところよ」って。それってこれと関係していたのかも?

 

12:15

さっきのイマーシブでもそうだったけど、おれってものすごく「状況と役割と関係性」にアンテナを立てて生きているんだな。

子どもの頃からずーっとそうだったから、息をするようなもんでほぼ自覚していなかったし、「場の中で足りない役割を見つけて、それを埋めようとする人」とは認識していたけれど。

でも、相手との関係が「一過性」か「頻度は低いけどやりとりがある(あるいは生まれそう)」か「毎日のようにやり取りする(あるいはせざる得ない)」かによって、相当無意識に自分を変化させているな、おれ…。これって態度にも出ているんだろうし、周りにも伝わっているんだろうな。

 

12:30

あ、いまこのImpro Kids Tokyoの講師の方、おれが最近忘れていた大事なことをサラっと言ったな。

「”まあいっか”って誰も言わずに流してしまうと、後からそれが”それでいいこと”や”そういうもの”になってしまいかねない。」 — そうなんだよ。『「空気」の研究』だよ、王様は裸だ。

 

12:45

(会場を離れた電車の中で。)無意識のバイアスについてはこれまで研修に参加したり、自分が研修を企画したりしてきた。その中で、自分なりの「(仮の)答え」を置いてきた。

そもそも人間はバイアスの塊で、バイアスそのものに良いも悪いもない。

悪なのは「不公平な扱い」につながるバイアスである。

(参考: 無意識のバイアス研修に参加しました – ダメパチ撲滅協力のお願い

 

ただ、今日の体験を踏まえると、自分が「無意識の」を置いてきぼりにしてきた気がする。

まずは自分の、あるいは世間のバイアスに意識的であろう。無意識なままでは、同じ失敗を繰り返してもその発端に気づけない。バイアスを意識しよう。無意識ゆえに「不公平な扱い」につながるバイアスを、そのまま気づかないままにのさばらせてしまわぬように。

「(仮の)答え」をアップデートしておこう。

人はバイアスを作り続けるようにできているけれど、それを意識することはできる。

バイアスを常に意識して、それが「不公平な扱い」につながらないように注意しよう。

 

研修を提供してくれたソフィアさん。イマーシブを体験させてくれたOut Of Theaterさん、インプロを味わわせてくれたIMPRO KIDS TOKYOのお2人、本当にありがとうございました!

 

 

ところで、最初に「早く到着したセミナーやワークショップ会場でスマホを使う」と書いたけれど、これは半分本当で半分嘘です。

おれの場合、会場のセッティング(机や椅子の配置)や雰囲気、周囲の人たちの様子を見て、スマホと一緒に1人で時間を過ごすこともあるし、意識的に周囲の人たちに声をかけたりすることを使い分けています。

 

でも、それが主催者のためなのかその場にいる全員のためなのか、はたまたその裏側には「よく思われたい。感心されたい」という気持ちのおれがいるからなのか、自分でもよく分かりません…。

多分、全部がごっちゃになっているんだろうな。

 

Happy Collaboration! 

 

Amazonにて発売中です『フューチャーデザイナー・ブック - 未来を創る方法論と実践方法 -』

オリジナルはこちら


少々前なのですが、コペンハーゲンの戦略デザインファームBespoke社の本『Book of Futures』の日本語版フューチャーデザイナー・ブック – 未来を創る方法論と実践方法 –』が、Amazonで発売開始されました。

今回、私は翻訳をさせていただきました。

『フューチャーデザイナー・ブック』の日本語版と英語版の写真(黒地に白文字が日本語版です。表紙が目次になっています。)

 

フューチャーデザイナー・ブックは、Bespoke社のデザイン・フレームワークの基礎を解説した本で、以前は彼らのワークショップに参加した方に英語版の書籍をプレゼントしていました。

これまで「英語かぁ…。日本語版があったらなぁ」と何人かが小声で言うのを耳にしていましたが、今後は日本でのワークショップ開催時にはこちらの日本語版をプレゼントさせていただきますね。

 

今回はオンデマンド出版という「注文が入るたびに印刷してAmazonが発送する」というスタイルを取ることにしました。これなら、印刷しすぎて紙や倉庫の無駄を発生させてしまうこともありませんし、発送作業に手間を取られることもありませんので。

一方この仕組みにしたことで、料金は少し高めになってしまいました(なお、私自身とBespokeおよびエンゲージメント・ファーストの収益は実質ゼロ円です)。

ただ、私は出版社から「著者割引」で購入できるので、私と直接顔を合わせる機会がある方には500円引きの¥1,700でお渡しすることが可能です。ご希望の方はご連絡ください。

 

パラパラと立ち読みしたいって方は、以前のブログ記事をどうぞ。いくつかリンク貼っておきます。

 

この本がBespoke流のフューチャーデザインズに興味を持ってもらえるきっかけになれば嬉しいし、多くのフューチャーデザイナーが生まれることに少しでも役に立てたら最高の喜びです!

今回の日本語版の出版にあたり、チャンスをくれたエンゲージメント・ファーストの原さんと、細かな部分の確認や修正で多大なサポートをしてくれた我有さんに、最大限の感謝をお伝えします。

忘れてかけていた子どもの頃の「本を出してみたい」って夢が叶いました。嬉しいです。本当にありがとう!

 

あ、それから「Kindle版が出たら購入したい」という方がいたら教えてください。ある程度の人数がいるようであれば、Kindle出版も検討しようと思っています(こちらは価格をグッと押さえて半額くらいにできるかな?)。

最後に、今回の出版に寄せて原さんと我有さんと3人で書いた序文をこちらにも掲載します。

 

エンゲージメント・ファーストより日本語版の出版によせて

 

ビスポーク社との出会いは2017年の秋でした。

弊社親会社のメンバーズは、世界幸福度ランキング1位常連国のデンマークの生産性、働き方、従業員の幸せ、学び方、イノベーションなどをベンチマークし、その考え方や手法を経営の根幹に取り入れようと、経営陣や社員が頻繁にデンマークを訪問し、研究を進めていました。

その際、デンマークに造詣の深い株式会社レアの大本氏に、ビスポーク共同創業者のルネとニコラスの紹介を受けたことがきっかけでした(この3人はデンマークのビジネス・デザイン・スクール「カオスパイロット」の同級生です)。

 

最初のデンマーク訪問で強く感じたのは「心地よさ」「幸福感」でした。家具やグラフィックだけでなく、すべてがデザインされていました。そう、人間や地球が幸せになるような設計が至る所でなされていたのです。

デンマークのデザインスクール・コリングで校長や教授陣と対話した際には、デザインの根底に「People」「Planet」「Play」「Profit」という4Pを掲げていくことを教わり、腑に落ちた気がしました。

その後デンマークを再訪して分かったのは、デンマーク人のDIY精神です。自分のため仲間のため、そして地球のために必要なものならば、自らが動き仲間を集め、一歩でもそこに近づいていこうという意思に満ちた行動力の強さでした。

 

WWFが警鐘を鳴らしている「資源的に地球が2つ必要になる」2030 年が目前に迫ってきています。

目先の利益にこだわり過ぎて行き過ぎてしまった現在の消費社会に変化をもたらすマーケティング革新を起こし、持続可能な社会を創造することをミッションとしている私たちエンゲージメント・ファーストも、 意思に満ちた行動力を強めなければなりません。

 

ピーター・ドラッカーは「未来を予測する最良の方法は、未来を創造することだ」と言いました。本書「フューチャーデザイナー・ブック」は まさにその実践手法を解説した一冊です。

その未来は「未来志向」「社会課題解決志向」「デザイン思考」「共創」「好奇心」を持ってデザインされるもので、希望にあふれる社会へ、会社へ、生活へと向かうものです。

未来をデザインする仲間「フューチャーデザイナーズ」が日本に一人でも多くなるよう、私たちはこの日本語版「フューチャーデザイナー・ブック」をお届けすることとしました。また、年に数回、ビスポークのファシリテーションによるワークショップも提供していきます。

「いつか誰かがこんな社会を、会社を、生活を変えてくれるに違いない」 — こんな風にただ待つのが嫌だったら、一緒にフューチャーデザイナーになりましょう。

 

Happy Collaboration!

 

 

あなたにとっての未来とは? - イベントレポート x 2

オリジナルはこちら

 

登壇したイベントのレポート記事2件を、記念がてらブログに書いておきます。

まずはこちら。

 

デンマーク発の「未来を自ら創造する」デザイン思考。ありたい未来に向けた課題解決を

デンマークのデザイン会社Bespokeのニックとアンドレアスを招いたミートアップイベントで、4月に大手町の3×3 Lab Futureで開催しました。

この日の私は自分がデンマークで感じたことを10分くらい話した後は、主に彼らの通訳をやっていました(参考: デンマーク流【望ましい未来をデザインする力】

 


IDEAS FOR GOODさんの写真をお借りしています。

 

以下に、当日ニックたちが話したことの一部と、私のコメントを。

 

「私たちは、未知(Unknown)をナビゲートすることを学んでいかねばなりません」

— 自分が知らないということをまず知ること。あるいは認めること。それが未来を生みだす冒険の準備のスタートです。
予測不能性に溢れた世界の中で、「まだ知らないこと」に対し、強い好奇心と想像力で向き合うこと。それが、暗闇の中にじっと潜んでいる社会的、環境的、経済的な要因を照らし出します。

 

「われわれにとって喫緊の社会的な危機とは、経済や金融などではない。イマジネーションの欠落だ。この現象をあらわす、新しい言葉が必要だろう。」

— イタリア人メディア・アクティヴィスト、フランコ・ベラルディの言葉らしいです。さしづめ、今の私はこれに「宇宙矮小化(ユニバース・ミニマイザー)」とでも名前を付けるかな?

世界を見るのも、複数の視点を知るのも、それまで正解だと思ってきたものが揺さぶられるので嫌だ。それならいっそ広い宇宙を見たくない、一つの世界観で過ごしていたいと志向の現象化なのかも。

イマジネーションを拡げ、さらに先へと進ませるのは「インサイト」です。

 

「新しいものに便乗する人ではなく、流れをつくる人になっていかなくてはならない。」

— Bespokeの『フューチャーデザイナー・ブック – 未来を創る方法論と実践方法 -』に、書かれている言葉を紹介します。

<変化を発見したいのなら、トレンドの兆候として現れたその先を見れなければなりません。何がそのトレンドの出現を可能としているのかを見出すのです。どんな新しい価値観や行動や文化の変化が現れ、それを人びとはどのように体験しているでしょうか? こうした新しい流れを正しく捉えられれば、真の問題を解決し、真のニーズを満たし、有意義な未来をデザインできる可能性が高まります。
可能性を広げるためにも、大胆であることや勇気を持つことを恐れることなく、自分たちの道を見つけ出しましょう。>

 

「あなたにとっての未来とは?」


IDEAS FOR GOODさんの写真をお借りしています。

 

次にこちらを。

イノベーションはデジタルプラットフォームで管理できるのか──可視化・言語化によるアイデア創出の可能性

3月に日本アイデアスケールさんが開催されたイベントで、アイデアスケールの福澤さんがモデレーターで、01Booster CEOの鈴木さんと私がトークをするというものでした。

記事だけでは伝わりづらい部分を、いくつか解説させてもらいます。

 


Biz/Zineさんの写真をお借りしています。

 

「大企業から見ればスタートアップはこだわりの強い偏執狂、スタートアップは大企業を担当者によって言うことがコロコロ変わる多重人格者と思っていてお互いが理解できない」ゆえ「本当の意味で手を組む意味合いが見えるまで、両者が手を組む必要性はない

— 「大企業とスタートアップは、パートナーシップを組むことが正解」という前提を、なんとなくその場に感じてしまったんですよね。なので、議論がスタートする前に、とりあえずその違和感と、それに対して思うところを伝えました。

…本当のところ、こんなことを言うほど私は現場体験があるわけじゃないんですけどね。
でも実際、これまで目にしたり相談されたりした「うまくいっていないケース」にはこの構造が当てはまると思っています。

 

「株主に寄りすぎた企業の形を無理に残すよりも、転生して違う形になる方が正しいと思う」

— 「正しい」という言葉は、今見るとあまり相応しい使い方ではなかった気がします。ここで語られるべきは、正しさよりも好ましさの話、あるいはその正しさは誰にとってのものか、だったかなと。

最近聞いた友人の言葉です。

「うまくいっているときは、自分たちの身の安全など気にせず、ステークホルダーにとっての良いことを追求できる。でもうまくいかなくなりだすと、身の安全を最初に考えるようになって、自分たちの利益や利便を優先しだす。これって、人間の脳の原始的な部分である「爬虫類脳」からきているから、そう簡単には変わらない。」

 

「大企業は常に自社が中心にいるエコシステムを描こうとする。それではただのピラミッド構造と同じ」

— これもちょっと単純化し過ぎで、「常に」じゃなくて「ほとんどの場合」が正確だと思います。そしてこれも、前述の「爬虫類脳」的な話かなって思っています。

で、こういうのって、個人も法人も同じで、周囲にはそのスタンスが漏れ伝わってきます。エコシステムが意味する生態系がやたらと小さい。誰もそういう相手と付き合いたい人なんていないよね。

 

「自分のやり方を確立している一方で、違う意見に価値を見出せるかどうか」

なお、会員向けとなっている2ページ目以降では、「マニフェストを作ってオープンにして共有する。言語化が持つ力のすごさ」という、デンマークで感じてきた話が書かれています。その話については、こちらでも紹介しているので、よかったら併せて読んでみてください: デンマークのオープンソースとマニフェスト

 

最後に、これから開催するイベントを2つ紹介します。

5/28 & 5/29: Futures Design Basic Course(1日コース)

1日完結型のFutures Design Basic Courseを、Bespokeを招いて開催します。私は通訳として参加します。

5/31: Bridge to the Better #1 デンマークに見る「越境力」

デンマーク大使館の在日参事官 マーティン ミケルセンさんと、デンマーク在住のニールセン北村朋子さんのお話を聞いたあと、働き方、学校教育、リカレント教育、ヒュッゲ、福祉、キャリア、恋愛、SDGs などについての学びを深めていきます。こちらも通訳として参加予定です。

 

もしどちらかでお会いできたら嬉しいです。

Happy Collaboration!

タマネギとアボカド – 読書メモ『ハーバードの心理学講義』

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自分の興味や方向性をあらわす言葉の一つとして #幸福中心設計 をここ1年ほど使っています。

先日書いた、質問票への答え(脳みそ解体再構築)集というブログエントリーでは、以下のように #幸福中心設計 を説明しました。

 

僕らは幸福を追求する生き物なはずなのに、幸福を追求するのがすごく下手くそなんじゃないかという気がしてます。例えば、快楽とか楽しさも幸福の構成要素だとは思うんだけど、瞬間的なそれを強く求め過ぎてるとむしろ幸福とは程遠い結果につながったりするでしょ?

そういう全体感というか、俯瞰的な見かたで、日常の小さなことから社会の大きなことまでを「どうすればもっと幸福になれるのか」って考え、意識して行動し暮らすことが幸福を中心に据えたデザインなのかなって。

改めてこれを読むと、社会の大きな幸福のことだけ考えて、まるで自分の幸せは追求していないみたい…。

もちろんそんなことはなくて、まずは自分自身の幸福を真っ先に追求しているのですが、私の場合(そしておそらくほとんどの人も同じじゃないかな?)は「他人の幸福をサポートできたときに幸福感を強く感じる」のを自覚しているので、そこを強く意識しています。

また、幸福をデザインするにあたり幸福とは一体なんなのかを常に見直したり考えたりし続ける必要があると思っているので、最近では結構その類の本を読んでいます。

 

と、前置きが長くなりました。

今回書こうと思っているのは最近読んだ『自分の価値を最大にする ハーバードの心理学講義』(ブライアン・R・リトル 著、児島 修 訳)という本を紹介したかったからです。

私は「ハーバードのxxx」だの「スタンフォードのxxx」だのというタイトルの本を見ると、心に一筋冷ややかな風が流れて手にする気が起きないタイプだったのですが、最近になって「日本語タイトルはたいてい日本の出版社や編集者都合でつけられたもので、本の中身や質にはさほど関係がない」ということにようやく頭が回るようになりました。

重要なのは原題ですね。この本は『ME, MYSELF, AND US』です。

 

読み終わって最初に思ったのは、この本は「幸福をデザインしたい」と思っている人には、必ずどこか響くところがあるだろうということでした。ただ、逆に扱っている範囲が幅広いので、「そこはいいや」ってところも人によってはありそう。

すでに出版されてから時間も経っていて多くの書評が出ています。

でも、なぜか「タマネギとアボカド」に関する研究や事例の話はあまり取り上げられていないみたいなので、このエントリーではその部分にフォーカスしてご紹介しますね。

でも、その前に、私なりの言葉でこの本の趣旨をまとめてみます。

 


  • 人は、あらゆるものやできごと、人や概念を、その人なりに評価基準に合わせて解釈している。
  • 評価基準がとても固定的な人もいれば複数のそれを常に変化させ続ける人もいる。
  • 評価基準の基になっているものの1つが、ビッグファイブと呼ばれる個人特性を表す5つの項目(誠実性 | 協調性 | 情緒安定性 | 開放性 | 外向性)のバランスである。
  • ビッグファイブの特性バランスがそのままその人の日々の行動として現れるわけではない。
  • 人々の行動を動機付ける大きな要素は、遺伝(生まれ持った性質)的動機、社会的(社会や文化の規範に合わせようとする)動機、個人的(生活の中で追求している計画や目標と深く関連するその人固有の)動機の3つがある。
  • 表出する行動が常に一貫している人と変化する人がいて、それはその人の状況に対するスタンスや行動の取り方による。
  • そのスタンスや行動の取り方を測るのがセルフモニタリング(SM)テストで、スコアが高い「タマネギ型」の人は、例え特性的には内向的であっても必要とあらばパーティーで積極的に振舞うことができる。
  • SMテストのスコアが低い「アボカド型」は、ステーキを一口食べる前から塩を一振りする。
  • タマネギ型は人からどう見られているかを気にし、状況に合わせて振る舞うことができる。アボカド型はどう見られているかを気にしないので自分の価値観に従う。
  • パーティーに友人を誘う際、タマネギ型は「集まりに相応しい場の雰囲気に合う友人」を誘い、アボカド型は「場の雰囲気に関係なく自分の気の合う人」を誘う。
  • 自分のSM度とその傾向を知り、それを自分の価値観とバランスさせることで自身の幸福感を高めることができる。
  • コントロール(自己効力感)、コミットメント(関係への積極性)、チャレンジ(変化受容)がパーソナリティの中心にあると、幸福度を高められる。
  • 人は環境に大きな影響を受けるので、自身の「環境気質」を理解した上で、住環境や生活環境を選んだ方が幸福度を高められる。
  • また、自身の環境気質の理解により、ソーシャルウェブとの関わり方やそこでの振る舞いをよりポジティブなものにできる。
  • 生活に意義をもたらす「重要性」「自分の価値観との一致」「自己表現できる」の高いコア・パーソナル・プロジェクト(CPP)を持つことで、幸福感を高められる。
  • 人はあらゆる人と似ていると同時に誰にも似ていない。多面的な自分を受け入れ手を取り合って歩んでいこう。

 

箇条書きで16個…もっと絞りこもうと思ってたんですが、絞り切れませんでした。

そして中盤の太字にしたところが「タマネギとアボカド」に関係する部分です。

皆さんはセルフモニタリング(SM)テストって聞いたことがありましたか? ビッグファイブ特性や環境気質は他の本などで読んだことがありましたが、私はこの本で初めてSMテストのことを知りました。

 

そして、このテストをやって結構ビックリしました。

18問にマルバツで答えて、最後に答え合わせをするタイプのテストです。全部で5分もあればできるものなので、ぜひ皆さんもやってみてください。

 

  1. 他の人の行動を真似ることは苦手だと思う。
  2. 人の集まる場で、他の人を喜ばせるようなことをしたり、言ったりしようと思わない。
  3. 確信を持っていることしか主張しない。
  4. あまり詳しく知らないことでも、とりあえず話をすることができる。
  5. 自分を印象づけたり、その場を盛り上げようとして演技しているところがあると思う。
  6. たぶん、いい役者になれるだろうと思う。
  7. グループの中では、めったに注目の的にならない。
  8. 場面や相手が異なれば、まったくの別人のように振る舞うことがよくある。
  9. 他の人から好意を持たれるようにすることが、それほどうまいとは思わない。
  10. 自分自身は「いつも見た目どおりの人間」ではないと思う。
  11. 他の人を喜ばせたり気に入ってもらうために、自分の意見ややり方を変えたりしない。
  12. 自分には、人を楽しませようとするところがあると思う。
  13. これまでに、ジェスチャーや即興の芝居のようなゲームで、うまくできたことがない。
  14. いろいろな人や場面に合わせて、自分の行動を変えていくのは苦手である。
  15. 集まりでは、冗談を言ったり話を進めたりするのを人にまかせておく方だ。
  16. 人前ではきまりが悪くて思うように自分を出すことができない。
  17. いざとなれば、相手の目を見ながらまじめな顔をして嘘をつける。
  18. 本当は嫌いな相手でも、表面的にはうまく付き合っていけると思う。

 

採点方法: 以下の◯×と、自分の答えが一致するものに◎をつけてください。
最後に◎の数を合計したものが、あなたのセルフモニタリング尺度のスコアになります。

1× 2× 3× 4◯ 5◯ 6◯ 7× 8◯ 9× 10◯ 11× 12◯ 13× 14× 15× 16× 17◯ 18◯

 

 

いかがでしたか?

すでに想像されていると思いますが、タマネギは『幾層にも皮が重なっているが、めくって行っても中心となる核のようなものはない』、アボカドは『中に硬い核のようなものがある』というところからきている比喩です。

私がビックリしたのは自分のタマネギっぷりでした。やる前からタマネギ型だろうなとは想像していましたが、なんとなんと17/18であてはまりました。

 

唯一あてはまらなかったものも、ちょっと悩んで違う方に答えたものだったので、いわば17.5/18って感じです。

…まあでも、核もあると思ってるんですけどね。だから「ものすごく小さな核を持ったアボカド」じゃないかな、おれ。

 

 

この本の一つの特徴は、このSMテストをはじめビッグファイブ特性テスト、ローカス・オブ・コントロールテスト、ストレス耐性やクリエイティビティチェックなど、多数の「科学的(統計的)パーソナリティ・チェック」を解説しながらも、その度に慎重に「故に私はこういう人間である、以上。と受け取るべきではない」と強調していることです。

最後に、それを表現した文を3つ引用します。

 

■ 実際には、人生ではいつも普段通りの自分でいられるわけではありません。そのときに力を発揮するのがさきほどご紹介した「自由特性」と呼ばれる「変化できる性格」です。もとの性格と違う自分を演じることは、自分を偽るというようなことではなく、私たちの可能性を広げてくれる、意義のあることなのです。

 

■ 私たちがキャラクターの外に出るのは、「大切にしているもの」があるからです。人間は、生まれ持った性格に従って行動するときに力を発揮することもありますが、愛情やプロ意識から普段とは違う行動をとることで、個人や職業人としての責任を果たそうとするのです。

 

■ 注目するテーマは、「コア・プロジェクトの持続的な追求が、幸福度を高める」というものです。持続的に取り組んできたプロジェクトを理解することは、これまでの人生の歩みを振り返り、自分自身を理解することと、将来の新たな可能性についての視座を得ることの両方に役立ちます。

 

Happy Collaboration!

 

読書メモ『デンマークの親は子どもを褒めない』…実際は褒めます

オリジナルはこちら

 

以前『俺のクレド』にも書きましたが、私は「みんなが自分と周囲の個性を大切に尊重しながら、幸福とつながりを感じながら生きる」世界が身の周りに拡がって欲しいと願っています。

でも実際には、「自分らしさや自分の感情を上手に隠して生きる」ことがますます拡がっていて、むしろそれが上手になることが、上手く生きるために必要と感じる人が増えているような…。

そんな社会や生活が良いものだとは、私には何をどうしても思えないのです。

 

一方で、理想的な生きかたを実現しているように私には見えるのが、デンマーク社会です。

視察旅行以来、デンマーク関連の本を読んだり、デンマークで暮らしている人や所縁の深い方たちとの交流を通じ、ずっと「どうしたら自分と周囲の個性を大切に尊重し、幸福を感じながら生きることが当たり前のことにできるのか?」と考え続けていました。

 

 

デンマークの親は子どもを褒めない』という本は、そんな疑問に1つの答えを与えてくれるものでした。

 

価値観が作られ積み上げられていく幼少期に、家でも学校でも一貫して「個性の尊重と幸せに生きる術こそが重要だ」と教わること。

教える大人たちが、自らがそれを実践し続けること。

それにより、世代を超えて価値観がつながり、社会のスタンダードとなっていくこと。

 


 

ところで、この本のタイトルの「子どもを褒めない」は、真意を伝えることに失敗しています。

 

「え、どういうこと?」と興味を持たせるには役立っているのでしょうが、どちらかと言えばこのタイトルゆえに手に取らせなくしてしまっていそうです。

本の本当の中身を説明しているのは、サブタイトルの『世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方』であり、『The Danish Way Of Parenting – What the Happiest People in the World Know About Raising Confident, Capable Kids』という英語の原題です(「デンマーク流親業 – 世界一幸せな人たちが知っている自信と能力に満ちた子どもの育て方」が1番ストレートな訳ですかね)。

 

褒めます。褒めるんですよ!

ただその褒め方が、成長マインドセットgrowth mindset)を育む褒め方にあらゆる面で徹底しているんです。

具体例はこの本に譲りますが、「努力するプロセス」や「スキルを習得しようという意欲」に焦点を当てて褒め、硬直マインドセット(fixed mindset)と呼ばれる「人からの評価や生まれつきの能力に捉われる」ことがないような褒め方をしているんです(成長/硬直マインドセット自体をもう少し知りたい方には、こちらのページをオススメします)。

褒め方の他にも特徴的なものがいくつかあるのですが、この本ではそれをPARENTという5つの頭文字で紹介しています。

 

P: Play(遊ぶ) – 自由遊びが、適応力とレジリエンス(折れない心)を持つ「未来の幸せな大人」を育む。

A: Authenticity(ありのままを見る) – 正直な人は自尊心が強い。子どもの褒め方を工夫すれば、「硬直マインドセット」ではなく「成長マインドセット」が育まれ、キレない子どもに育つ。

R: Reframing(視点を変える) – 物の見方を変えると、親子共に人生がいい方向に変わる。

E: Empathy(共感力) – 「共感力」を理解し、実践し、教えることが、幸せな親子になるための必須条件。

N: No Ultimatums(叩かない) – 自分の正しさを主張する「権力争い」をやめて「民主型の子育てスタイル」にすると、信頼関係とレジリエンスが育まれ、子どもがもっと幸せになる。

T: Togetherness (仲間とつながる) – 幸せに生きるためには、仲間との強いつながりを持つことが、何よりも大切な鍵。「ヒュゲ(居心地のいい)」な環境づくりが、親から子へ贈る最強のプレゼント。

 

先に書いたのは、「A: Authenticity(ありのままを見る)」の部分ですね。

各章それぞれに印象的なポイントがあるのですが、ここでは「P: Play(遊ぶ)」「E: Empathy(共感力)」「No Ultimatums(叩かない)」から一部を引用してご紹介します。

 

「P: Play(遊ぶ)」

子どもは鉄棒にぶら下がったり、木登りをしたり、高い所から飛び降りることで、危険な状況を試しているのだ。自分にとってのほどよい度合いや対処の方法は、本人にしかわからない。自分が扱える量のストレスを自分でコントロールできていると感じることが重要であり、この経験が、自分が人生の舵を握っているという感覚につながるのだ(…)他人と一緒に遊ぶと、衝突もあれば協力する場面も出てくる。遊びを続けるためには、恐れや怒りなどさまざまな感情に対処する術を学ばなければならない。

 

「E: Empathy(共感力)」

本心を打ち明けたり、弱みを見せたりすることを恐れるのは、批判や拒絶をされたくないから。この恐怖感が、多くの人間関係をうわべだけのものに制限してしまう(…)一方、バルネラビリティの対極に位置するのが「他人を見下す」ということ(…)批判ではなくサポートが感じられる社会的つながりを持ったほうが、はるかに清々しい気分になれるのをご存知だろうか。
他人を見下し、常に人より上を目指すことの問題点は、「弱い自分」が浮上してきたときに、強い不快感や不安感を覚えることだ。

 

「No Ultimatums(叩かない)」

デンマークの学校では子どもに民主性を教える一環として、毎年生徒たちが教師と一緒にルール作りをする。年度の始めに教師と生徒が、良いクラスとは何か、クラスを良くするために何を重んじ、どう行動すべきかについて、長時間意見を交換するのだ(…)デンマークの教師は、「ディフランシェーア(differentiere「区別する」の意味)」という指導要領を学んでいる(…)教師は各々の生徒と一緒に目標プランを立て、年に二度、個々の成長をフォローアップする。フォローの対象は、成績、性格、人間関係など、生徒によって様々だ。

 

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私には子どもがいませんし、どちらかと言えば苦手です。そして、これまで幼児教育や学校教育について学んだこともありません。

でも、理想の社会を本当に求めるなら、そこは避けてはいられないなと強く感じました。

具体的なアイデアやアクションはまだ何もないけれど、好奇心や興味を教育にも持ち続けていこうと思っています。

 

この本からもう1つ私が得たものがあります。

レジリエンス(折れない心)のある幸福な子ども」を育てるためのさまざまなアドバイスは、私自身を「レジリエンスのある幸福な大人」に育てるためのものでもあるということです。

 

タイトルで誤解され、子育て中の親や教育関係者に手に取られないのはもったいなさ過ぎる一冊です。

さらには、個性を尊重する生きかたについて考えている大人も手にすべき一冊だと思います。

 

Happy Collaboration! 

 

訃報 八木橋(パチ)さん 118歳 著述家

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訃報 八木橋(パチ)さん 118歳 著述家

八木橋昌也(やぎはし まさや) 一九六九(昭和四十四)年九月二十七日、埼玉県生まれ。著述家。エナジャイザー。

 

先月29日、山梨県南巨摩郡の山林の中で発見された遺体が、パチの愛称で知られていた著述家で、元猫と幸せ研究所副所長の八木橋昌也氏であることが判明した。遺体解剖の結果、発見時はすでに死後3日程度経っていたと思われる。

 

遺体が発見された山林は、近年薬物性のきのこが取れることで話題となっており、故人の体内からは大量のアルカロイドが検出された。遺体近くに置かれていたスマホには「もうそろそろいいかな。あ、でも生き返るかもしれないよー」というメモ書きが残されていたことなどから、山梨県警では事故死と自殺の両面から調べているものの、事件性は低いと考えられている。

 

故人には近親者がいないことから葬儀の予定はない。なお、友人有志による会費制のお別れ会を、故人が十代の頃から通っていたサイゼリアにて開催予定(飲み放題)。

 

八木橋氏は海外視察ツアーの企画やアテンダントの他、講演やイベントの司会など多種多様な活動で知られていたが、「お役所でも海外でも、著述業って名乗っておくのが一番都合がいいんだよ」と後年は著述家を自称していた。

日本アイ・ビー・エムを退社後、北欧と日本を行き来する生活の中で感じたことを軽妙なタッチで綴った『デニッシュ・デイズ(かんき出版)』は十万部を超えるヒット作となったが、単著は六十年前に出版されたその一冊のみで、その他の書籍はインタビュアーやインタビュイーとしての対談集で、「言葉を形として残していくものはすべて著述。対談集っていうのは音楽でいえばセッションでしょ。だからおれの本はライブ・アルバムで、おれはライブ・ミュージシャン。」と嘯いていたと言う。

 

「猫に責任能力がないとして、猫を所長と認めないのは人間の怠慢であり傲慢である」という訴状で世を騒がせた「猫と幸せ研究所所長裁判」や、「千葉県クリスチャニア市運動」「マインドフル妄想会議」など、いくつかの社会性を伴う騒動を起こしたが、本人は「どれも実現性に難があることは分かっていた。でもプロの揉事家でいたかった」と、本紙のインタビューに答えている。

なお、上記いずれの事件においても有罪判決は受けておらず、また三十代前半までの暮らしなどに不明な点が多いものの、本紙調査によれば前科は確認できていない。

 

八十余年を共にした妻・清美さんを失った二千七十年以降はほとんど公の場に現れなくなったが、年に一度の「エナジャイザー祭り」にだけは欠かさず現れ、「エナジャイザーの元祖はおれだから」とだれかれ構わず小遣いをせびり、主催者を困らせていたという。受賞歴なし。

 

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マインドフルネスの手法の一つに、ジャーナリングというものがあります。

ノーテーマで、あるいはテーマを決めて書くのですが、重要なルールが「人に見せないことを前提に」「手を止めずに頭に浮かんだことをただただ書き続ける」ということ。

これで、心が整ったり、自分でも気づいていなかった欲求を見つけたりすることができると言われています。

 

…なのですが、今回「自分の死亡記事」をテーマに書いてみたら結構おもしろいものができましたので、半分くらい手を入れて、人に見せれるように書き換えてみました。

 

図らずも、明日は49歳の誕生日。ここで書いたストーリーが現実になるのは69年後の予定です。

Happy Collaboration!

 

ワークショップデザイン・実施 – 20のヒント

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数カ月前にとあるファシリテーション1日体験コースに参加したのですが、その際、講師のディランさんに『20 Lessons Learned in Designing and Delivering Workshops』という素晴らしいプレゼントをいただきました。

自分がワークショップを開催する前にチェックシート的に見直したり、勉強会に参加した後に読みながら振り返りをしたりするうちに、なんだかもっとたくさんのファシリテーターやセッション講師の人にも知ってもらいたくなりました。

 

そして先日、ディランさんに「日本語に翻訳してブログで紹介したい」と伝えたところ、快く了解をいただけました。ディランさん、ありがとうございます!

 


ディラン・スカダーさん

2008年よりマイルストーン会長兼CEO。ジュネーブの国連研修部門において研修分野でのキャリアをスタート。コーチングと組織開発のコンサルティングが専門。

 

ワークショップ・デザイン & 実施における20のヒント

 

1. If I ask the group a question, I’m careful not to answer it myself as participants will then often become passive. Instead, I get comfortable with silence and wait until someone replies. This creates an even flow of communication right from the outset.

グループに質問を投げかけたら、自分で答えは言わないこと。参加者が受け身になるきっかけとなります。なかなか手が上がらなくても、リラックスして黙って待ちましょう。これがセッション全体を通じたスムーズなコミュニケーションのきっかけとなることもあります。

 

2. I avoid calling on individuals. Instead, I show that I’m eager to hear from anyone in the group who has something to say. I may ask, “Who’s first?” and “Who’s next?”

特定の誰かを指名することはしません。代わりに「それでは最初は誰が?」「どなたか次は?」と聞くなどして、意見を求めていることを伝えます。

 

3. Gradually ‘disappearing’ myself is something I will do to confirm that the group is standing on its own legs, supporting each other, less dependent on the facilitator. I sometimes do this by slowly moving to the side or back of the room. I see this as a form of ‘scaffolding’.


じょじょに「自分を消して行く」ことでグループを自立させ、参加者がファシリテーターを頼るのではなく、互いにサポートしあう場を作ります。実際にゆっくりと部屋の隅や後ろに移動するようにしていて、私はこれを「足場作り」と呼んでいます。

 

4. I look for opportunities to build in peer-to-peer learning. When participants are able to teach the subject matter to each other, then they’ve really learned it well.

参加者が互いに教え合う場面を積極的に組み込みます。専門知識をシェアしあうようになっていれば、良い学びの場になっているということです。

 

5. I try to “get out of the way” of participants’ learning by using most of the time for them to speak – especially with each other.

参加者の学びの邪魔にならないよう、私ではなくできるだけ参加者が、それも参加者同士が話し合う時間を持てるようにします。

 

6. I keep in mind the danger of running a session that is ‘powerpointless’ – participants tend to focus either on the speaker OR the slides. It’s difficult to do both at the same time. Slides really are there only as support material for the discussion in the room.

パワーポイントの使いすぎでポイント不明にならないようご用心。意識を2つのものに同時に向けるのは困難で、参加者の意識は話し手とスライドのどちらかに偏るものです。スライドとは、参加者の対話を促すためにだけ存在しているのです。

 

7. I try to minimize anything that isn’t directly related to the learning objective. If we overload participants with information they only need to get through the session, we’re just facilitating for the sake of facilitating.

学習目的に直接関係しないことは最小限にするよう心がけています。情報量が多くなり過ぎると、参加者はただ情報を受け取るためだけの場としてしまいますし、ファシリテーターファシリテーションすること自体を目的化してしまいます。

 

8. I believe an important strength of team-based learning is that it mirrors how most workplaces actually function. It’s rare, for example, that individuals make executive decisions without facing the pressure of persuading their colleagues (or recognizing the error in their thinking).

私がチームベース・ラーニングに信を置くのは、それが職場の現実の写し鏡であることがほとんどだからです。実際のところ、個々人が同僚を説得することへのプレッシャーを感ずることなく(あるいは同僚の思考の誤りを意識せずに)重要な決断を下すということは滅多にないことです。

 

9. I’ve observed that participants often begin to doubt themselves if given enough time to worry. To prevent this, I get participants into an activity right at the start of the session. That way, they’re already doing what they came to learn how to do before wondering if they can do it!

考える時間があり過ぎると、参加者は自分たちを疑い始め心配してしまいがちです。対策として、私はセッションの始めからすぐにワークをしてもらうようにしています。こうすれば、自分たちができるかどうかなんて気にする間もなく、学ぶことを実践する他ありません。

 

10. I’ve learned not to be a ‘cheerleader’ for the content of my sessions, not to feel that I need to defend it. It can be more helpful to take the side of the participant and discuss honestly why a certain theory – for example – cannot be applied in the real world.

チアリーダーとなって自身のコンテンツやセッションを応援したり、守ろうとしたりはしないほうがよいと私はこれまでに学びました。参加者側に立って、「実社会ではこの理論は通用しない。なぜなら…」と言った具合に、正直にディスカッションをした方がよいでしょう。

 

11. Motivation is so central to the learning process that I sometimes ask participants to write down their goal at the beginning of a session, and then remind them regularly to use each stage of the session to consciously work toward their goal. At the end of the session, more often than not, they discover that they have naturally gravitated toward their goal.

学びのプロセスにおいてモチベーションの重要性は言うまでもありません。ですから、私は参加者に最初に各自の目標を書いてもらい、合間合間にそこへと向かっているかを確認してもらううことがあります。セッション終了後に尋ねてみると、ほとんどがそれが到達に役立ったと答えます。

 

12. Giving participants a chance to work with different people over the course of a session helps not only with creativity but also with building relationships. I think the latter adds to the overall success of learning events.

セッション中にグループやワーク相手を変えてもらうことで、想像力に刺激を与えるだけではなく、参加者のリレーションシップ構築にも貢献することができます。そしてこの関係性が学びのイベントの成功の一因ともなるのです。

 

13. I have found that escalating the level of challenge over the course of a session helps to keep participants excited about reaching ‘the next level’ and gives them a sense of achievement.

セッションの間に挑戦レベルを上げていくと、参加者のレベルアップへの熱意を掻き立て、達成感を与えることができます。

 

14. I have learned that what most participants want more than anything is attention. To do this without interrupting them, I walk around the room, lean into conversations a bit, and sometimes sit at the table to show participants that I’m interested in how they’re progressing.

ほとんどの参加者が何よりも求めているものは「注目」です。邪魔になることなくそれに応えるため、私は部屋を歩き回って彼らの会話に耳を傾け、ときにグループの一員となることで彼らの進捗に関心を持っていることを示します。

 

15. I find it to be a much deeper learning experience when I create an environment in which participants discover how to do something than for me to just tell them how others do it.

他の人たちがどうやっているのかを私が伝えるのではなく、参加者が自分たちで見つけ出せる環境を提供できたとき、彼らはより深い学びの経験を得ることができます。

 

16. I think it helps to give participants a sense of mission; an ambitious goal, limited resources, and some teammates – off you go! To me, this is symbolic of the challenge of life itself.

参加者にミッションを与えましょう。野心的なゴール、限りあるリソース、そしてチームメイトを! — これで準備万端です。私にとって、これらは人生という挑戦のシンボルに他なりません。

 

17. My default assumption is that the most important technology needed for the session will fail. I prepare therefore to run my sessions as completely ‘tech-free’ events just in case.

もっとも重要な機器にこそトラブルは起きる — セッションにこう考えて臨むようにしています。「機器なし」でも問題ないように準備し備えておく、これで「危機なし」ですね。

 

18. Humor is a wonderful gift that transcends all walls and brings people closer together. I tend to be more serious by nature, but I welcome humor wherever it appears.

ユーモアにはあらゆる壁を取り払い、人びとを近づける素晴らしい力があります。私はつい真面目になり過ぎてしまうたちなので、ユーモアのチャンスは逃さないよう心がけています。

 

19. For me, the most natural and effortless relationship is the one I have with participants. I do what I do for them. The organizers, sponsors and administrators are all important, but the facilitator- participant relationship is the one that counts most.

私にとっては、最も自然でいられるのは参加者と私の関係性です。私がセッションをやっているのは彼らのためなのですから。主催者もスポンサーも管理者もすべて重要ですが、ファシリテーターにとって最も重要なのは参加者です。

 

20. The most important guideline I use is keeping the learning exercise as realistic or “true to life” as possible. Simulating in this way helps to overcome the ‘transferability’ problem of whether what has been learned in a workshop can be applied to the workplace. When the practiced behavior is identical to the target behavior, the transferability question disappears.

私が使用している最も重要なガイドラインは、学習の機会を可能な限り現実に、つまり「実際の姿」に近づけるということです。こうしてシミュレートすることで「移転性」の問題は克服され、ワークショップからの学びがどのようなものであれ職場に適用しやすくなるのです。練習が実際と一致していれば、移転性の問題は消えさります。

 

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いかがですか?

私にとっては、とりわけ1の<沈黙を恐れるな>や7の<ファシリテーションを目的化するな>、10の<コンテンツを守ろうとするな>や20の<可能な限り実際の姿に近づけろ>などが、今後セッションをやる際に忘れずにいようと強く思わされたものでした。

きっと、みなさんにとっても有用なものがあったのではないでしょうか。それではまた。

Happy Collaboration!