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イノベーションが次々と生み出され、顧客の期待が高まり、人材がますます分散化しているグローバル環境において、多くの企業は、地位や職業を問わず、個人の知識と経験を効果的に活用する必要性を感じている。また、企業が「ソーシャル・ビジネス」を志向するに従って、顧客の意見や価値観を取り入れることはこれまで以上に重要になっている。
幸いなこ
とに、さ
まざまな
層の知識
、洞察、
専門技術
が結集し
た
集合知の効果的
な活用は
、現実の
ものとな
りつつあ
る。個人
がアイデ
ィアや意
見をWe
b上で共
有するこ
とに慣れ
ていけば
いくほど
、企業は
これらの
知見を活
用してビ
ジネスの
重要な課
題に対処
すること
ができる
ようにな
る。
…
集合知の活用を成功させるには、以下の3つの対策が必要である。
- 抵抗が生まれる原因(運用の課題、既存のしきたりとの対立、管理職のマネジメント能力の不足、役割と責任の変化など)に対処する
- 集合知が職場の文化に馴染み、職場のITもうまく活用できるように工夫する
- 集合知の発見に基づいてアクションを取り、その価値と成果を組織にも個人にも伝える
…
従来のアプローチと新しいアプローチのいくつかを組み合わせることで、企業は従業員、顧客、ビジネス・パートナー、消費者、外部の専門家その他のネットワークを活用して、以下のようなことに取り組めるようになった。
- 市場を揺るがすような革新的な新製品/サービスのアイディア発掘
- 効果的なビジネス・プロセス改善と効率化手法の開発
- エンド・ユーザー /顧客のフィードバックに基づく製品の改良
- 顧客との共同商品開発によるエンゲージメント向上とブランド・ロイヤルティー強化
Citiは96カ国2万人以上の従業員を対象とするコラボレーション・イベント(Jam)を開催し、88カ国から6,000人を超える従業員が登録した。この55時間のイベントにおいて、参加者は平均すると4時間もの間、討議に参加していた。イベント終了後、運営側はログを分析して異なる議論の内容を関連付けたり、新たな洞察を見出すべくコメントを深掘りしたりした。
Global Franchise Init
iati
vesの
マネージ
ング・デ
ィレクタ
ーである
Mei Li Tan氏
によると
、このJ
amはあ
らゆる階
層の社員
の
集合知を全社的
に活用し
て将来の
方向性と
戦略を検
証しただ
けでなく
、従業員
のエンゲ
ージメン
トを高め
ることに
なった。
これは、
彼らのア
イディア
が尊重さ
れ、ビジ
ネスのア
クション
・プラン
と施策に
取り入れ
られたた
めである
。
現場やローカル・オフィスで手に入る専門知識を活用するために、El Pasoはコラボレーション・ツールを導入し、従業員が事業部門を超えてベスト・プラクティスと知識を共有できるようにした。このプラットフォームには、従業員のプロフィール、スキルと専門知識のデータベース、ロケーション情報、ケース・スタディー、その他の関連情報が含まれている。
このような実践コミュニティーの成果として、El Pasoは初年度に120万ドルのコスト削減に成功した。これは、直接経費の削減、サイクル・タイムの短縮、生産性の向上についての情報共有が実を結んだのである。
集合知の
活用とは
、企業が
幅広くア
イディア
や情報を
収集する
ことだけ
ではない
。集めた
アイディ
アを実現
する際も
、
集合知のアプロ
ーチによ
り世界中
に散らば
った労働
力や才能
を活用す
ることが
できる。
仕事を必
要なスキ
ルやレベ
ルに応じ
て分解し
、それに
合った社
内外の人
材に割り
当てるこ
とで、品
質の向上
が見込ま
れる。さ
らに、仕
事を分解
して複数
の人に割
り当てる
ことによ
り、いく
つかの作
業が並行
して進め
られるた
め、完了
までの時
間が短縮
される。
群衆を動員したデジタル写真ライブラリーのタグ付け
写真タグ付けの新興企業であるTagasaurisと写真家集団のMagnum Photosは、説明や分類情報を持たないMagnumライブラリーの写真の内容とテーマを特定するという膨大な作業のアプリケーション・ベータ版を開始した。
現在、オンライン・ライブラリーに保管されている50万枚の写真の半数近くがこのカテゴリーに該当する。Magnumは、35万人近い同社のTwitterのフォロワーにこの作業への支援を依頼した。新しい写真がレビュー可能になると、参加者に通知が送られる。参加者はアプリケーションにアクセスし、写真にタグを付けてリファレンスを記載する。数名の参加者から同じ内容のタグが付くことで、その写真のタグが認識され、品質保証プロセスを経た後、検索可能なオンライン・ライブラリーに追加される。
参加者にとっては、未公開の写真を閲覧できることが報酬となるが、Magnumは参加者が作業した写真家のサイン付き限定グリーティング・カードやカレンダーの贈与など、別の形での報酬についても検討している。
市民科学者のゲーマーが数十年来の問題を3週間で解決
ワシントン大学の科学者たちは、オンライン・ゲームの手法によって、生物医学研究の困難な課題を解決した。レトロ・ウイルスに関連する酵素の結晶構造を解明するさまざまな試みが失敗したのち、科学者たちはタンパク質の折り畳みゲーム「Foldit」を開発し、タンパク質の正確なモデルを作るために市民科学者の支援を募った。Folditでは、誰もが簡単な折り畳み手法を学んで仮想分子を操作できる。
さまざまな学歴と居住地から57,000名を超える人々がこのゲームに参加した。ゲームの参加者は、長年にわたって科学者を悩ませてきた難問を3週間以内に解決し、レトロ・ウイルスの新薬開発に重要な知見をもたらした。
参加者集団の規模
適切な参
加者集団
の規模は
解決しよ
うとして
いるビジ
ネス課題
によって
も異なる
が、これ
までの調
査の結果
、いくつ
かの重要
な原則が
明らかに
なってい
る。まず
、
集合知のそれぞ
れのアプ
ローチで
十分有益
な洞察を
得るには
、一定数
以上の積
極的な参
加者が必
要である
。例えば
、実践コ
ミュニテ
ィーの活
動では、
コミュニ
ティーを
活性化さ
せ取り組
みを維持
するのに
、最低で
も20 ~ 30人が
必要にな
る。これ
がバーチ
ャル・デ
ィスカッ
ション型
の場合は
、数千人
とは言わ
ないまで
も数百人
規模は必
要となる
。結局の
ところ、
適切な集
団の規模
は、図2
に示す3
つの要因
に基づい
て決まる
。
破壊:ブレイク・スルーをもたらす創造的破壊の観点を備えた参加者は確保されているか。ディスラプターとは、常識に挑戦し、独自の考えで現状を打破することに意欲的な人物であり、その多くが前向きな思考の持ち主である。対象者集団に十分な多様性が確保されている場合でも、こういった人物がいて議論を活性化させることは必要だ。これにより、集団思考や群集心理が緩和され、さらに優れた解決策にたどり着く可能性が高まる。
社内の集
合知活用
の場合も
、参加者
の動機付
けが難し
いことに
変わりは
ない。ギ
フト券や
Tシャツ
等のささ
やかな贈
り物によ
る外発的
動機付け
は、一部
の人にと
っては参
加のイン
センティ
ブとなる
かもしれ
ないが、
より注目
したいの
は内発的
動機付け
をうまく
活用した
例である
。多くの
参加者に
とっては
、自分の
貢献が仲
間に認知
されるこ
と、新た
な人脈作
りやキャ
リア開発
の可能性
、または
自分の意
見が意思
決定者の
耳に届く
という認
識がモチ
ベーショ
ンの源泉
になって
いる。先
進的な組
織におい
ては、知
識が豊富
な社員だ
けでなく
、自分の
知識や洞
察を他者
と共有で
きる社員
が評価さ
れるとい
うことを
、人々は
認識しつ
つあるよ
うだ。
…
取り組みの主催者と参加者との信頼関係が参加者を動機付けるもう1つの要因であることは、多くの研究者と組織のリーダー達によって明らかにされている。信頼は以下のような形で参加者に示される。
- 提案したアイディアは尊重され、努力が認められる
- 知的財産所有権の共有に関する合意が守られる
- 参加者のフィードバックは評価され、それに基づいたアクションが取られる
集合知の
施策が1
回限りの
イベント
であれ、
継続的な
変革の一
環を成す
ものであ
れ、参加
者を巻き
込んで積
極的な関
与を引き
出すには
、丁寧に
信頼関係
を構築す
る期間が
必要であ
る。信頼
関係構築
のために
行うこと
としては
、オープ
ンで協調
的な知識
共有文化
を示すコ
ミュニケ
ーション
活動、貢
献がきち
んと評価
され、そ
れに基づ
いて何ら
かのアク
ションが
取られる
ことの明
示、信頼
を損なう
恐れがあ
る好まし
くない行
為を直ち
に認識し
て抑止す
るシステ
ムの整備
などが考
えられる
。
…
皮肉なこ
とに、業
務責任者
として集
合知を最
も活用で
きるはず
の中間管
理職層が
抵抗勢力
となって
いるのが
実態だ。
多くのケ
ースでは
、
集合知の施策に
よって業
務の担当
要員を減
らし、納
期を短縮
すること
は可能な
はずであ
る。しか
し、施策
がこれを
実現する
ことがで
きず、投
資収益率
(ROI
)とその
他の利益
を速やか
に達成で
きない場
合、施策
は勢いを
失い、さ
らには経
営幹部の
支持も失
うことに
なる。
…
IBM Institute for Business Valu
eが実施
した創造
的なリー
ダーシッ
プに関す
る最近の
調査では
、こうい
った局面
における
リーダー
の考え方
の重要性
を明らか
にした。
ここで求
められる
リーダー
像とは、
目標達成
のために
斬新な方
法を受け
入れるリ
ーダー、
積極的に
アイディ
アを共有
し、メン
バーにも
そうする
よう促し
てチーム
に創造的
な活気を
作り出す
ことがで
きるリー
ダーであ
る。その
ために、
マネージ
ャーは支
配力では
なく模範
や創造的
な動機付
けによっ
てメンバ
ーを動か
し、業務
遂行の効
率化と品
質基準の
達成を実
現できる
ようにな
ることが
求められ
ている。
…
集合知の
施策をビ
ジネスに
取り入れ
ようとす
る組織は
、課題の
条件に合
わせて参
加者の範
囲(社内
/社外、
複数部門
など)を
調整し、
参加者が
法的責任
と道義的
責任(規
制当局、
現地の法
律、行動
規範の順
守など)
を認識す
るよう、
うまくコ
ミュニケ
ーション
を取る必
要がある
。
集合知の
技法、ソ
リューシ
ョン、プ
ラットフ
ォームの
発展は今
後も注目
されてい
くだろう
。そこに
は、イノ
ベーショ
ンと競争
優位を促
進する大
きな可能
性が秘め
られてい
るからだ
。
Happy Collaboration!