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『ザ・マネージャー 名将が明かす成功の極意』を読みました - フットボールを愛する人へ

オリジナルはこちら(2014/1/28)

 

私、1997年からイングランド・プレミアリーグを見続けているアーセナル・サポーターです。

ただ、サポーター暦こそそれなりに長いですが、試合よりも試合後のレポートなどの文字情報に触れている時間の方が圧倒的に多い「頭でっかち」なサポーターです。



イメージそんな私にとって、すごく面白くかった一冊を紹介します。

ザ・マネージャー 名将が明かす成功の極』 マイク・カーソン(著)、タカ大丸(

 

プレミアリーグで指揮を執っている/執った監督のインタビューや言動などを分析して「マネージメント」を掘り下げていくという本で、表紙にもなっている3人の名将、アレックス・ファーガソン、ジョゼ・モウリーニョ、アーセン・ヴェンゲルはもちろんのこと、他にもアンチェロッティ、マンチーニ、ホジソン、アラダイス、ブレンダン・ロジャーズなど、独自の「スタイル」を持った監督が多数登場します。

 

最初に書いたとおり、私はグーナー(Gooner) ですから(「グーナーって何?」な方はこちらを)、当然、最も注目するのはグーナーもアーセナルの選手たちも「ボス」と呼ぶ、ヴェンゲル監督の言葉です。

 

ボスの凄いところは……

そうですね、本の紹介を兼ねて『ザ・マネージャー 名将が明かす成功の極意』に書かれているボスの言葉をピックアップしていきたいと思います。

 

PhotoArsène Wenger looks on

by Ronnie Macdonald

Photo『Arsène Wenger looks on』 by Ronnie Macdonald

「国際主義」「若手登用」「適正な価格での選手の取得」「攻撃を主眼においた楽しいフットボール」という哲学を貫いているボス。

そんなボスの哲学は、自身の生まれ育った場所と時代――まだ戦後日が浅く、ドイツへの不信感が強く残っていたストラスブールのデュッセンハイム村――からスタートしたようです。

 

■哲学: 幼少時代

「(幼少の頃)私は好奇心を抑えきれず、国境を越えて西ドイツに入ってみた。すると、そこには私たちとまったく同じ人間が暮らしていた。(略)幸せを求め、同じように仕事に行き、人生を楽しむ人々だった。結局、完全な善人もいなければ完全な悪人もいない。そしてみんな幸せになりたいのは同じなのだ

 

■哲学: お金と伝統

「大金が入るようになって選手が変わってしまったという見方もある。だが、お金だけですべてが解決するわけでもない。どれほどの大金があったとしても、毎朝首や膝に痛みを抱えて目覚めることに変わりはない。」

 

「だから、このクラブでは、我々は根底に伝統的な価値を残すよう努めている。つまり、周囲の人々に対する敬意、困ったときに団結すること、選手の家族をサポートすること。約束を守るといったことだ。」
 

 

 

スポーツと音楽は、世界中の人とつながれる最高のコミュニケーションツールではないでしょうか

ボスも、自身の幼少時代、現役選手時代、そして名古屋グランパスの監督時代の経験を踏まえ、フットボールとグローバリズムについて語っています。

 

グローバリズム: 選手時代の経験

「人間は、相手と一言も話さなくても感情をあらわすことができる。今でも選手時代のことでよく覚えているのは、一言も話せないロシア人の選手からいいパスを受け、同じ感情を共有できたと実感したときのことだ。だからこそ、スポーツは素晴らしい。」

 

グローバリズム: 日本での経験

「(日本での)経験から、あらゆる人間は教育の過程の一環で14歳になる前に6カ月か1年か異文化の中で暮らすべきと確信するようになった。それにより、生まれつきのライフスタイルが唯一のものではないと分かるようになるからね。そして、さらにオープンマインドになれる。(略)自分の文化の中で生きれば心地がよいのはわかる。だが、それだけが唯一の生き方ではない。それを伝えることができるのがスポーツなんだ」

 

グローバリズム: スポーツが発するメッセージ

「スポーツは共存する世界のあり方を示すことができると思う。明日の世界では、今日よりさらに誰もが共に生きていかねばならない。(略)一つのクラブに18の国籍の選手が混在し、お互いを信用して何か大きなものを作り上げようとする、素晴らしいと思わないか?」

 

 

ボスの監督就任期間は今年で18年。プレミアリーグの現役監督の中では最長記録です。

そんなボスのモチベーションは「試合・仕事・フットボールへの愛情」と「自分自身を高い次元に引き上げたい。もっと優れた存在にありたい」という思いだと言います。では、選手のモチベーションや将来については、どう見ているのでしょうか?

 

■選手の将来を見る: モチベーション

「お金だけがモチベーションになっている場合、選手がそれ以上になることは絶対にない。(略)トップレベルの選手たちはベストになりたいという強い動機を持ち続けている者だ。ストライカーは勝利を求め、ディフェンダーは負けを嫌う。だが、最終地点はどちらも同じなのだよ」

 

■選手の将来を見る: 自己評価

「選手たちに対して、今までのパフォーマンスをどう思うか評価させ、私は注意深く選手の言葉に耳を傾ける。もしその選手が公平な評価をしていたならばこの男は見込みがある、と思う

 

■選手の将来を見る: 野心

「野心についても語らせる。これを聞けば、その選手がどれくらいの高みをめざし、そのためにどれだけの犠牲を払う覚悟ができているのかがよくわかる。もちろ ん、フットボールの世界では特別な才能が必要だが、選手が20歳をすぎたら、何を考えて生きているかのほうがよほど大切なのだよ
 

 

 

昨年、クリスマスパーティーでコスプがソーシャル上でも話題となったアーセナルですが、それ以外にもハロウィンのパーティーやチームイベントなど、ピッチ以外での選手間の団結の強さを目にする機会も多いのが我らがアーセナルです(とりわけ今年はすごく仲が良いようです!)

この団結も、ボスの選手との関係作り、さらには記者やサポーターとの関係作りがあってこそなんじゃないでしょうか。

 

■人間関係: 選手

「一人ひとりが持っている力をすべて発揮し、クラブに対して貢献していると実感できる組織を作りたいと強く思っている。誰にでも成功のチャンスはある。ただ、残念ながらこのゲームにおいては全員が成功するというわけにはいかない。(略)確実に一定の人数は試合から外れることになり、所属感覚は消えてしまう……」

 

「試合に出ていない選手、怪我した選手は自分が役立たずだと思ってしまう。(略)だからクラブ内部においては、そんな選手たちに敬意を払い、自分の持ち味をしばらく発揮できていない選手を認めてあげることが大切なのだよ」

 

■人間関係: 主将

「チームに二人のリーダーがいて、まったく違うことを言っているときほどひどいことはない。だからこそ、監督にとって主将と多くの時間を過ごすことは大切なのだ。そこで主将がチームに何を必要としているかを聞き、ロッカールーム内部でどのような問題が発生しているのかを聞く。まあ、すべてを洗いざらい話すことはまずないが

 

■人間関係: 記者

「私は、記者の意見を尊重している。もし相手が私のことを悪い監督と呼び、間違いを指摘するのであれば素直に受け止める。仕事に関することであればどれだけ批判されても構わない。(略)彼らもまた、私と同じように仕事をしているのを認めている。そして、彼らの仕事も決して楽なものではない

 

■人間関係: ファン、サポーター

「あらゆる人があらゆる事柄に意見を持ち、インターネットで即座に発表する。すなわち、決断を下す立場にある人への敬意が消え去り、あらゆる決断に疑問が呈されるようになった。つまり現代においてよきリーダーであるための重要な要素はストレスに対する耐性だ」

 

 

サッカーチームの監督は、頭が良いだけでも、厳しいだけでも、短期的な成功を収めるだけでもダメだと私は思います。

ここ数年、毎年キープレーヤーを引き抜かれ続けてきたボスの言葉には重みがあります。

 

■リーダーシップ: アイディアとビジョン

「私に言わせれば、よきリーダーになる人とはアイディアと世界的なビジョンがある人だと思う。世界的ビジョンを持つには、世界に通じる哲学を持ったうえで何が大切なのかという価値観をはっきりさせておくことが必要だ」

 

■リーダーシップ: アイディアの実践

「私がこの仕事を気に入っているのは、単なる知識人以上のものになる必要性があるということだ。知識人とは、アイディアをこねくり回す人間のことだ。フット ボールの監督にもアイディアは必要なのだが、それに加えてアイディアが有効であることを示し、実践に移していかなければならない。」

 

■リーダーシップ: 長期的視点

「結局、クラブはファンのもので、一人の男のものではない。であるからには、一人の監督が去ってからも動き続ける組織にしておかなければならず、一番大物の選手がいなくなってもやっていけるように、経済的にも存続できるモデルを作っておかなければならない

 

 

以上、ボスことヴェンゲル監督の言葉でした

こうして書き写していくうちに、改めてボスの情熱や信念が改めてチームの柱となっていることに気付かされました

 

ところで今回、この本のことを書きたいと思ったのにはもう一つ理由があります

それは、「訳者まえがき」に書かれていたタカ大丸さんの一言です。

最後にそれを紹介して終わろうと思います。



“当たり前の話だが、フットボールの本はフットボールを愛する著者によって書かれ、フットボールを愛する翻訳者に訳されるべきだと思う

 

Love Football! Happy Collaboration!

 

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今年こそ優勝するぜ