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Pachi's Blog Annex ~自薦&自選よりぬき~

『Pachi -the Collaboration Energizer-』の中から自分でも気に入っているエントリーを厳選してお届けします♪

不採択論文その1: 企業ソーシャルがもたらす効果と課題点

オリジナルはこちら(2016/1/7)

 

2015年の夏に書いた論文が「これは論文ではなく意見文ではないか?」といった評をいただき不採択になりました。

確かに「意見・提言」と言われればそうかも…という内容かと思いますので、ちょこっとだけ編集してブログ記事にします。長いので数回に分けます。

 

今回はその1「企業ソーシャルがもたらす効果と課題点」です。エンタープライズ・ソーシャルに取り組んでいる方に役立つ部分があれば嬉しいです。

 


 

企業ソーシャルがもたらす効果と課題点

 

■ 企業向けソーシャルと一般向けソーシャルの

 

一般向けのサービスやソフトウェアをそのまま、あるいはわずかな変更で企業内に導入することを「コンシューマライゼーション」と呼ぶ。

スマートフォンやソーシャルウェブの企業内への持ち込みがコンシューマライゼーションの代表的なものと言われているが、前者がBYOD(Bring Your Own Device)と呼ばれる個人端末のビジネス利用の促進などを通じて順調に導入率や使用率を高めている[1]のに対して、後者のソーシャルウェブの社内業務への適用に関しては、そのテクノロジーの有する高い可能性の割には導入が進んでいない [2]。

[1]業務用スマートフォンの導入状況, http://www.keyman.or.jp/at/30006945/
[2] ITによる情報共有の取り組み状況, http://www.keyman.or.jp/at/30007495/

 

まず、企業内でソーシャルウェブ普及が進まない原因を考えてみたい。

最初に指摘したいのは、一般向けと企業向けで、ユーザーがソーシャルウェブを利用する理由や背景に大きな差がある点だ。

一般向けのFacebookやTwitterなどが日常生活における楽しさが重視されているのに対し、企業ソーシャルでは楽しさは重視されていない。

 

2つ目は、一般向けソーシャルウェブではユーザーは機能ごとに最も便利なソーシャル・ツール局面毎に使い分けているのに対し、企業ソーシャルは管理の観点から複数のシステムを使用することが好ましく思われておらず、1つツールにすべての「便利さ」が求められる傾向が高い。

 

最後に、ツール供者の姿勢に大きな違いがある。

FacebookやTwitterなど成功している一般向けソーシャルウェブはその収益を広告から上げており、より多くの新規ユーザーを獲得し維持することがサービスの繁栄を意味するビジネスモデルとなっている。それに対して企業向けソーシャルウェブは業務を遂行するうえで必要なサービスを提供することが第一義である。

この姿勢の違いがユーザーの捉え方に大きな差を生み出している。

 

 

■ 企業ソーシャルに求められる効果と目的

 

前述した通り、一般向けと企業ソーシャルにおいてユーザーとツール供者の双方において、使用理由や提供理由に大きな違いがある

こうした「存在理由」とも言える根底部分が異なればツールの使用効果を測る際に用いられる指標や考え方も異なるのが当然だが、実際には一般向けのソーシャルウェブやウェブサイトの効果測定指標が企業向けソーシャルにおいても用いられている。

 

具体的には、一般向けソーシャルにおいてはユーザーあたりの表示ページ数と滞在時間が効果測定の標準的な重要指標として用いられている[3]。これはその数値が広告接触時間と比例することが大きな理由であり、多ければ多いほど、長ければ長いほど良いとされる。

しかし企業ソーシャルにおいては広告が存在していないのだから、ユーザーあたりの表示ページ数と滞在時間という測定指標の持つ重要性には大きな違いがあると言えるだろう(なお、これはツールに対する親和性や接触頻度を測るという別目的での有用性を否定しているわけではない)。

 

ここで、企業ソーシャルに求められる効果とその導入目的を確認しておこう。

ソーシャル・ツールが企業活動の一環として用いられることから、その導入目的が自社ビジネスへの貢献であることに疑いはないが、もう少し細かくその目的を見てみたい。

 

Altimeter社が250人以上の従業員を有する企業44社に実施した調査「Making the Business Case for Enterprise Social Networks」[4]では、その目的が「価値の高い情報共有やコラボレーション」であることがわかる。

企業が期待している効果項目を見ていくと、コミュニケーションの推進による効率性向上追求(リデュース型)とコラボレーションの推進による改善・創出追求(クリエート型)の2つに大別できると考える。


表1. 企業ソーシャルへの期待項目とタイプ

[3] Webサイト効果測定の基本指標, http://www.webdbm.jp/column2010/column2010-04/130/
[4] Altimeter「Making the Business Case for Enterprise Social Networks」, http://www.slideshare.net/Altimeter/altimeter-report-making-the-business-case-for-enterprise-social-networks.

 

 

■ 一般消費者向けソーシャルウェブとの違いと求められる効果から見えてくる課

 

企業ソーシャルはコンシューマライゼーションというその成り立ちの部分でこそ消費者向けのそれとのつながりはあるものの、導入目的や効果測定に関しては異なる点が多いことがここまでで分かった。

とりわけ、導入や使用が「課題の解決を目的としている」ことを考えれば、効果測定はその目的をどれだけ満たしているかを測るべきものである。そして企業ソーシャルの主な目的は「コミュニケーションの推進による効率性向上」と「コラボレーションの推進による改善・創出」の2つであるから、そこにどれだけ近づいているかを測定するべきであろう

 

具体的には、コミュニケーションとコラボレーションの量・質を数値的に測定することとなる。

コミュニケーションとコラボレーションは、どちらも双方向性があって初めて成り立つものであり、社員による「共有のためのアクションとリアクション」という具体的な情報受発信行動が欠かせない。

ここでは、情報の受発信行動の回数が量的に測定可能な数値となる。量とは異なり数値化に工夫が必要となるのが質だが、上記の企業ソーシャルに期待されている目的・効果内の言葉がヒントとして、「部門間コラボレーション」「企業文化」「ビジネス変革」「社員間のコラボレーション」「プロセス改善」といった、イノベーションの重要な発生条件と一般に言われている「多様性のある環境と関係性」を作り出す、広範囲に渡る受発信行動の量を質的に転換して捉えることができるのではないかと仮定する。

 

 

続く:  ( 不採択論文その2: 企業ソーシャル効果測定の考え方 )

Happy Collaboration!