「レジリエント・カンパニー」と人を動かす指標
オリジナルはこちら(2016/11/11)
指標(しひょう)とは、物事を判断したり評価したりするための目じるしとなるもの。
(Wikipedia 指標 より)
先日『いい指標がもたらすもの』という記事を読み、そこに書かれていた”いい指標は人を動かす“という分析を読んで、「指標」というものの持つ意味と価値を自分の中で改めて認識しました。
私が「指標」と聞いて真っ先にイメージするのは、自分たちの進むべき方向や道のりを伝えてくれる力強さと包容力を持つ、未来へ向けた地図のようなものです(でも実は、私はまったく地図を読めない男なのですがww)。
今、私は仲間たちと新しい指標作りの活動を進めています。
これからまだ紆余曲折があると思うし、「ジャジャーン!」って発表したい気もあるので今の段階であまり細かくは説明しませんが、簡単に言えば「人を幸せにする組織を増やす」ための指標を作ろうとしています。
もちろん、どれだけ壮大なことをしようとしているかは分かっています。
でも、壮大だからこそ「作るのだ!」という意思が重要だし、意思の基に動いているからこそいろいろなことが起きやすくなるんじゃないかと思うのです。
活動のさなかにピーター・D・ピーダーセンさん(以降ピーターさん)という、ステキなソーシャル・デザイナーと知り合うことができました。
ピーターさんと話をしていたら、彼の考えが、私たちの取り組みととても近い部分を持っていたことに気づき、ピーターさんの著書︎ 『レジリエント・カンパニー ~なぜあの企業は時代を超えて勝ち残ったのか』を読んでみたところ…ビンゴ! ヒントに満ち溢れた一冊でした。
とても壮大な視点と緻密な考察、そして溢れるほどの情熱が注ぎ込まれた一冊で、私が簡単に伝えられるものではないのですが、まずは一番コアな概念の部分を少し引用します。
◼︎ レジリエント・カンパニーとは
危機に直面した時の回復力が高く、事業環境の変化に柔軟に対応し、そのストレスや不確実性の中から、次なる発展のきっかけを見出し、社会全体の健全な営みに資する行動をとる企業。
◼︎ レジリエント・カンパニーの「3つの特徴」と「7つの行動」
3つの特徴
- アンカリング(Anchoring)ができている: 企業としての「拠り所」があり、社員と顧客(およびその他の利害関係者)を惹きつける魅力がある。さらに、信頼と信用を積み上げている。
- 自己変革力(Adaptiveness)が高い: 事業環境の変化をいち早く察知し、機敏に行動に反映できるカルチャーと組織をつくっている。
- 社会性(Alignment)を追求している: 社会の方向性(近未来市場における決定的な競争要因)と、自社の戦略と行動のベクトルが合っている。また、社会との好循環を生み出す行動に努めている。
7つの行動
- 価値観と使命を活かす(アンカリング)
- 信頼を積み上げる(アンカリング)
- ダイナミックに学ぶ(自己変革力)
- 創造性と革新力を引き出す(自己変革力)
- 研究開発を一新する(自己変革力)
- トレードオンにこだわる(社会性)
- ブランドを作り直す(社会性)
本の中では最初にこの特徴と行動が示された上で、ではどう具体的に進めて行けば良いのか、そして先駆者として取り組んでいる企業が紹介されています。
そちらはぜひ、手に取って読んでみてください。
もう一箇所、最後の方に描かれている重要なポイントが「レジリエント・カンパニーの4つの成功法則」です。
- リーダーシップ+アイデアの活発な循環
- トランスフォーメーションへの覚悟
- DNAとカルチャーへの埋め込み
- 放射状に価値を生む
この4つを実現させるために大きな役割を担っているのが、企業内ソーシャルだと私は強く思っています。
『レジリエント・カンパニー』の中で、トップ・ダウン・アップ、あるいはボトム・アップ・ダウンという言葉で紹介されているのは、経営層の構想が会社の隅々にまで浸透し、ボトム・アップで現場から出てきた経験や課題が経営層にまでしっかりと届き、それらがそれぞれの考えや行動に結びついていく活発なアイデアや意識の流れの重要性です。
これを実現させるのは、『見て見ぬふりをするのではなく、むしろ、改善のためにスピーク・アウトすることが、自分の責任だと感じている』社員を増やしていくことに他ならないし、『自社のDNAやカルチャーにまで新しい行動を落とし込むための努力』を経営層が怠らないことです。
社員が、時間や場所の制約を超え、内面から湧き出る多様性を発揮できる場所として、社内ソーシャルはアイデアや意識を磨き循環させる、とても重要な仕組みだと思うのです。
最後に、昨日のピーターさんとのディスカッションの一部を紹介して終わろうと思います。
■ 日本企業がトレード・オフしてきたもの
長命企業が多い日本だが、それは「自分を押し殺して耐え忍び守ってもらう」という社員のトレード・オフに基づいていたのではないか。
「長命の条件」が激しく変わっている現在、個人も組織もトレード・オン(何かを得る代わりに何かを諦める、捨てるではなく、両者を得る方法を見つける、あるいは見つけようという意思を持って行動すること)に踏み出す必要があるだろう。
レジリエント・カンパニーが衰退曲線を描く前に新規市場を開拓していくように、私たち個人も未来志向で、さまざまな制約を機会へと転換していこうという意思の力が重要だ。