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『企業はなぜ危機対応に失敗するのか』を読みました - 読書メモ漢字多め

オリジナルはこちら(2014/4/17)

 

先週一週間、九州旅行に行ってました。旅先で出会ったいろんなおもろいモノについて書きたいいい! と強く思っているのですが、なかなか時間が取れません…。

とは言え、新たにアウトプットしたいこともどんどん増えていってるので、今回は旅行中に読んだ「これは勉強になった!」という一冊を紹介します。

 

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企業はなぜ危機対応に失敗するのか

郷原 信郎 著

 

 

『相次ぐ「巨大不祥事」の核心』とサブタイトルにあるように、フォーカスされているケースは「食材偽装」「暴力団員向け融資」「白斑被害」と、どれもまだ記憶に新しいものばかり。

近年メディアを騒がせた「巨大不祥事」をケーススタディーに、企業の危機対応を背景から解説し、成功点と失敗点、取るべきだった策や今後のスタンスなどについてじっくり分析している一冊です。

 

本を一冊読んだ程度では、対応力を身に付けることなど不可能なとても深い知識と洞察力が求められる世界です。

しかし、パブリックリレーションズやコミュニケーションの世界にいる(あるいはいたいと思っている)人にとっては、今後、必須知識と言えるものになっていくんだろうと思いました。

そして、文中で示される切り口や捉え方は、危機対応だけではなく、コミュニケーションにおけるさまざまな場面で活用できるものだと思います。

 

ということで、以下、本の中でとりわけ「自分の中に刻み込みたい」と思ったところを書いておきます。

(言葉は本のままではありません。また、私の解釈が加わっているため、著者の郷原さんの意図を正しく捉えられていない可能性もあります。)

 

 

■「コンプライアンス」とは「法令遵守」ではなく、「社会的要請に応えること

 

「社会的要請」とは、複雑化・多様化する環境により変化し続ける社会の要請。

危機対応の基本は、企業が変化し続けるその要請に対して、どのように応えようとしているのかという姿勢を誤解を受けないように伝えること。そして「誤解」が生じている場合は、それを解消すること。

→ 「社会的要請」は、国民やメディアはもちろんだが、行政や捜査機関によって生み出されたり増幅されたりすることも多い…

→ あくまでも解消できるのは「誤解」(過去と事実は変えられない)

 

 

■「社会的要請」に応えるためには、企業組織をとりまく環境全体を把握することが重

 

組織は、その存在と活動を、社会に認められなければ存続できない。社会が生みだす要請全般が「社会的責任」という言葉にまとまり、それらが組織外部を取り巻くさまざまな「環境要素」となっている(組織内部の環境要素は「労働環境」イメージ

 

組織外部の環境要素

  • 事業環境 需要に応えて商品やサービスを提供する事業活動関
  • 自然保護環境 環境関連法への対応。および環境保護、保全活動関
  • 情報環境 企業の活動内容に関する情報、活動に伴って取得する個人情報の保護・管理関
  • 競争環境 競合する事業者間における事業者間の競争をめぐる関係。独占禁止法関
  • 安全環境 安全の確保の要請に応えることに関連する組織の環境。さらに「安全」という客観的な観点だけではなく「安心」という信頼感の観
  • 金融環境 事業活動に必要な資金の調達関連。直接・間接金融における適正かつ迅速な企業内容の開示。インサイダー取引禁止規定関

→ これらの環境の変化はそれぞれが有機的に絡み合っていて、変数的な要素を事前に踏まえていくのは難しい

→ 旧来、企業の資産は物理的な支配・管理が可能だった「有体物」だったが、現在は物理的、直接的な支配、管理が難しい「情報」がもっとも大事な資産となってきている。現在は、有体物の世界を念頭に作られた旧来の法体系と現実のギャップに誰もが四苦八苦している状態

→ また本書の別部分に書かれているように、マスコミが問題をどう取り扱うかは、メディアタイプごとのインセンティブによるところが大きい。そして行政がどう取り扱うかは「火の粉が自分たちにもかかるか」によるところが大きい

 

 

■同じ内容の事実公表であっても、メディアが短くサマライズしたときにどのような表現になるかを意識す

 

短く表現された場合にどんな見出しになるかは、本文の書き方に大きく左右される。

  • 「メニュー表示と異なる食材の使用」 → 「食材の使用」 → 読者の意識は「食材偽装」へ
  • 「実際の食材と異なったメニュー表示」 → 「メニュー表示」 → 読者の意識は「メニュー誤表示」へ

 


■その他いろいろ

 

反社会的勢力対策の意味合いが変わった

かつての日本社会における反社会的勢力への対応: 不当要求の拒絶

2007年ごろからの変化: 一切の関係を遮断した「ヒト・モノ・カネ」の供給途

→ 融資契約時に「暴力団排除条項」が導入されていたかどうかで取れる対応は異なり、一概にはいかない。また、実際に取りうる手段も限られている

 

劇的な環境変化の後には価値観も劇的に変化してい

原発事故前と事故後では、関係者への「やらせの依頼」に対する評価が激変した。「法令遵守」で考えれば、九電の「やらせメール」は法令にも規則にも何にも違反していなかった。しかし、原発事故後の社会においては、世間が電力会社に求める「社会的要請」はまるで変わっていた

→ 絶対安全神話の前: 原発は危険だと騒ぎ立てることは、無用な不安を近隣の住民や国民に与える社会的要請に反するこ

→ 絶対安全神話の後: 事故は絶対に起きないという前提がくずれ、原発運営会社の信頼性が問われるようになった。信頼性に関する判断に「やらせ」が入り込むことは一切許されなくなってい

 


情報環境の変化が労働環境に与える変化

社員、従業員個人が、ネットを通じて直接社内から社会へとつながる「情報環境」において、社員としての帰属意識が希薄な従業員が増えている。そこで起きているのが、悪ふざけなどを発端とした炎上などの大問題。

→ 企業側が取れるアクションは、組織への帰属意識を持たせ、自らの行動が企業と社会との関係にどのような影響を与えるかを認識させるための研修や教

→ 一方で、人が帰属意識を持つのは、企業という体温を感じられない存在ではなく「人」であることを意識したい。被害を被る人たち、責任者に対してどれだけ「つながり」を感じてもらえるか。想像力を働かせてもらえるか

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改めて書きますが、コミュニケーションの世界に生き、考えている人たちにはとってもオススメな一冊ですよ!

 

Happy Collaboration!