不採択論文その3: エンゲージメントを高める施策と事例
オリジナルはこちら(2016/1/15)
不採択論 文シリー ズ第3弾 です。そ の1とそ の2はこ ちらから :
エンゲージメントを高める施策と事例
■ ゲームニクス理論とゲーミフィケーション
前回説明 したパー ソナル・ ソーシャ ル・ダッ シュボー ド(PS D)の最 大の目的 は、企業 ソーシャ ルの目的 であるコ ミュニケ ーション とコラボ レーショ ンの量・ 質的向上 を実現す るために 、情報共 有に積極 的な社員 のモチベ ーション を保てる ようにす ることで ある 。
しかし、 情報発信 のハード ルを下げ ようと「 気楽に発 信しよう 」という 社内キャ ンペーン を実施す ると、一 時的なコ ミュニケ ーション の量的向 上は果た せても、 質の低い 情報が増 えてしま い、「企 業ソーシ ャルは仕 事に使え ない」と いう考え につなが ってしま うことも ある 。
また、「 ヒラメ社 員」など と揶揄す る言葉が 広く知ら れている ように、 「上司に 評価され る仕事し かしない 」という 考えを持 った社員 が多い企 業では、 広範囲を 対象とし た情報発 信という 行動の意 義や価値 を伝える ことは難 しいこと である 。
こうした 状況を打 破するた めの施策 の1つと して注目 されてい るのが、 「ゲーム ニクス理 論」と「 ゲーミフ ィケーシ ョン」で ある 。
今回は、 ゲームニ クス理論 とゲーミ フィケー ションを それぞれ 解説し、 その後に 社内ソー シャル上 でそれら が活用さ れている 事例を紹 介する 。
■ ゲームニクス理論とは
ゲームニ クス理論 とは、も ともとテ レビゲー ムやビデ オゲーム などのユ ーザー・ インター フェース (UI) に対する 考え方を 体系化し たもので 、古くか らそうし たゲーム 開発に強 みを持っ ていた日 本で発展 した理論 とも考え られてい る 。
例えば、 マニュア ルや説明 書などに 頼らなく ても操作 方法を理 解しやす くするこ とで初め てのユー ザーや初 心者ユー ザーにも 使いやす くしたり 、初心者 ユーザー が使い続 けたくな るような 情報や仕 掛けをソ フトウェ アやモニ ター画面 に仕込ん でいった りするこ となどが 代表的な ノウハウ とされて いる 。
具体的に は、プレ イヤーは 直感的に 以下のル ールと進 め方を理 解するこ とができ る 。
- 一定時間以内にゴールする必要があること
- Aボタン
を押すこ とでジャ ンプがで き、それ によって 敵を避け たりブロ ックを壊 してアイ テムを入 手したり すること ができる こ と - アイテムによりマリオが強くなること
こうした ノウハウ を企業ソ ーシャル に持ち込 むことで 、一般消 費者向け のソーシ ャルとの 使い方の 違いを直 感的に理 解しやす くする方 法や、さ らには操 作の習熟 度や理解 の深さに 合わせて 、心理的 な負担を 感じさせ ずにより 多くより 質の高い 情報共有 の実践を 推進する ことがで きるであ ろう 。
■ ゲーミフィケーションとは
また、ユ ーザーの 行動が本 人だけで はなく別 のユーザ ーにも好 影響を与 えるよう 、ユーザ ー間の行 動の関係 性を設計 していく ことも含 む 。
代表的な ものとし て、企業 ソーシャ ル上で特 定の好ま しい行動 を重ねて 来た社員 のプロフ ィールペ ージに、 その達成 数値に応 じたメダ ルやトロ フィーを 掲載する ことや、 一定数以 上の「い いね」と いう共感 やコメン トが付け られたブ ログ記事 の作者に 、特別な 追加機能 を提供す るといっ た例が知 られてい る 。
なお、ゲ ームニク ス理論や ゲーミフ ィケーシ ョンを取 り入れる 上では、 人間工学 や行動心 理学への 造詣の深 さが求め られるこ とが多い 。
また、近 年ではI Tサービ スの提供 者や開発 者と、コ アなファ ンから興 味を持ち 始めたば かりのユ ーザーを 「サービ スを中心 として成 り立った コミュニ ティー」 と捉え、 そのコミ ュニティ ーを育て ることで サービス の価値を 高めてい こうとす る「コミ ュニティ ー・マネ ージャー 」という 役割にも 注目が集 まってい る[8] 。
ゲーミフ ィケーシ ョンをデ ザインす る上では 、ユーザ ーのモチ ベーショ ンを管理 する方法 をソーシ ャル・ツ ールだけ に持たせ るのでは なく、ユ ーザーの コミュニ ティーへ の貢献活 動を称え 、より多 くの集団 に伝え広 めるなど の集団心 理や場の 変容を起 こすコミ ュニティ ー・マネ ージャー の必要性 や役割を 合わせて 検討する ことをお 勧めする 。
■ ヤマトフ ィナンシ ャルのゲ ーミフィ ケーショ ン事 例
ゲーミフ ィケーシ ョン手法 をうまく 適用し、 参加率9 9%の企 業ソーシ ャルを実 現したヤ マトフィ ナンシャ ルの事例 を紹介す る[9] 。
適用した 手法はい たってシ ンプルで ある。社 内ソーシ ャルへの 投稿数や いいね数 をポイン ト化し、 ポイント 数に合わ せてダイ アモンド ・金・銀 ・銅のバ ッジを授 与すると いうもの だ 。
この運用 が、単な るバッジ を意味あ るステー タスへと 変化させ ている。 人間の認 められた いという 根元的な 欲求に加 え、会社 における 上層部か らの認定 は、受賞 者のモチ ベーショ ンを高め ると共に 、他の社 員への良 い意味で の競争心 や認知欲 求を刺激 し、好循 環へと誘 ったのだ 。
また、社 内ソーシ ャルウェ ブ上でも 社長から のメッセ ージやコ メントが 投稿され るなど、 現実とデ ジタルの 世界をう まく連携 している 。投稿さ れる内容 も従来の 仕組みで は共有が 難しかっ た全国の 営業経験 談や地域 情報など 、すぐに 役立つも のが多く 、ソーシ ャル=遊 びのイメ ージを払 拭し、む しろ積極 的に活用 されるよ うになっ た 。
ゲーミフ ィケーシ ョンは、 ガートナ ーのハイ プ・サイ クル20 13年で ピーク期 と位置づ けられて おり、今 後、幻滅 期を越え た後には 企業ソー シャルの 展開を側 面からサ ポートす る手法と なるであ ろう[1 0] 。
次回、最終回へ続く( 企業ソーシャルへの提言と課題 )